| 2000年2月13日(日) 虐待 |
テレビで自分の子を虐待して逮捕されるニュースを時々見る。見ることなんてなかなかないだろう…なんて思っていたら、早くも見てしまった。主治医にはならなかったので、直接は見れず、写真を見せてもらった。
ひどい……。なぜこんなことに……。かなりショックだった。
普通できないところに青あざが…。一度見たら忘れられないひどい姿。耳の後ろ、目のまわり…。表情はこどもそのもの。その表情がさらに胸を痛くする。
しばらく見ていると、怒りが込み上げてきた。
「あなたのこどもがどんな気持ちなのかわからない?わからないなら、あなたがこどもにしたことをあなたにしてやろうか。」
虐待が起こるのはなぜ?親がまだ親になっておらず、こどもだから?だとすれば、今後も虐待はなくならないのだろうか?たくさんのことを教えてくれる子供を…。
あの子はその後大丈夫だろうか…。
| 2000年2月9日(水) 子供の薬 |
子供の飲み薬はその薬の効果だけでなく、味が問題となる。現在、飲み薬にはオレンジ味やイチゴ味などいろいろある。
子供は一度『薬がおいしくない』と感じると、たとえイチゴ味でも飲みたがらなくなる。お母さんが薬を飲ませたいがために、ミルクに薬を混ぜたため、ミルクの味が変わりミルクを飲まなくなることさえある。
私はできるだけ患者さんにあげる薬の味を確かめようとしている。以前、何にも考えずに飲ませていた眠り薬を試しに飲んでみて、あまりのまずさに驚き、それ以来飲ませず、おしりから入れるという別の方法ばかりを使った(実はこれで失敗したことも…)。
先日、あるけいれんの注射が痛い、と聞いて、どんなに痛いものか確かめたくなった。そのことを聞いた上の先生が「先生(私)は優しいから、子供に使えなくなるのでやめた方がいい」といわれた。そういわれると、ますますどのくらい痛いのか気になる。でも本当に痛かったらどうしよう。子供のためにもしない方がいいかもしれない。
薬屋さんによく効くだけでなく、子供に優しい薬を作ってほしいなあ。
| 2000年2月4日(金) 禁断症状 |
新生児科を離れて一週間になるが、ある禁断症状が現れだした。
赤ちゃんが抱っこしたいよ〜〜。
診断は「赤ちゃん抱っこしたい病」。泣いていた赤ちゃんを抱っこして上げると、すぐ泣きやむ。また哺乳ビンでミルクをあげると、一生懸命チュパチュパしている。「おい、がんばって飲み過ぎ」なんて言いたくもなる。また飲み終わり、げっぷをさせると、びっくりしたような目をし、いつの間にか眠っている。これがまたかわいいんだ。
今の病棟は子供がうろちょろして、にぎやかないわゆる“小児科病棟”で、学生時代楽しそうにみえた光景だが、現在なんとも感じなくなってしまった。それはそれでかわいいんだけどねえ…。これも禁断症状のひとつかな。
一度でも赤ちゃんを抱っこしたことがある人なら、わかってくれるのでは…。
| 2000年1月30日(日) 新生児科 |
新生児科で4ヶ月過ごしたが、とても楽しかった。
確かに、家になかなか帰れなかったり、夜中に呼び出されたり、いつ呼び出されるかわからないという束縛感があったが、とても充実していた。
新生児科は特殊な領域でありながら、育児・成長発達など全体のことも知識として入っていないとやっていけない。私は小児全体のことが把握できて、しかも特殊領域をもった医者になりたい、と思っていたので、とても魅力的だった。また晩婚化がすすみ、これからも新生児科医はまだまだ必要になってくるだろう。
私は“新生児(あなた)に生きる”?
| 2000年1月26日(水) プレゼント |
4ヶ月新生児科にいたが、その間ずーっと一緒にいた赤ちゃんが2人いた。あの頃はとってもちっちゃかったけど…。
お母さん達は私のことを『先生』と呼ぶが、私の先生は赤ちゃんである。特にその2人には4ヶ月の間いろいろ教えてもらったので、そのお礼として、私からプレゼントを用意した。
一人目の赤ちゃんには絵本をプレゼントした。動物の絵などが書いてある絵本で、絵本自体でも遊べるようなとても頑丈なものにした。そのつぶらな瞳でその絵本を見て、いろいろ覚えてね。
もう一人の赤ちゃんにはピンクの洋服をプレゼントした。そのかわいいお顔と鳴き声にぴったりの洋服を選んだよ。
2人の成長を見てきて、愛着が出てきた。大きくなって逢いたいなあ。
| 2000年1月19日(水) 家族の力 |
予後の悪い赤ちゃんに何ができるか?両親とできるだけ一緒にいられる時間を作ること、状態がいいときにできるだけ一緒に過ごせる時間を作ってあげることだと思う。
先日、予後の悪い赤ちゃんが生まれた。予後が悪いことを両親に説明をした。その両親は私の予想以上に状況を素早く把握でき、すぐ“やさしい医療”を開始することができた。
実際にはどのようにしたか?ミルクが飲めるのを確認して、点滴をはずし、全身状態がいいときに外泊してもらう。もちろん状態が悪くなったら病院に帰ってこれる環境を作っておいた。
その赤ちゃんはとても状態がよかった。その病気からして、そういう状態になること自体、珍しいことだった。私は2泊3日の外泊を許可した。お父さん、お母さん、お姉ちゃんと初めての生活である。いろいろ心配事はつきなかった。ところが、2泊3日の外泊を終えて帰ってきたとき、驚いた。病院にいた頃よりも元気になっていた!よく泣いてミルクを欲しがる!顔色も明らかにいい!これが家族の力か?感動し、涙が出てきた。
その後も状態がいいので、ずっと外泊させて、週に1回の健診を行う予定である。
この赤ちゃんは家族の力で残りの時間を幸せに過ごせるのではないか。医学的には説明できない、その家族の力で…。
| 2000年1月18日(火) 染色体異常 |
人間の細胞には46本の染色体がある。それぞれが対をなしているので、23対あることになる。遺伝子はその染色体に組み込まれている。
頻度は少ないが、生まれた時点で染色体に異常がある子がいる。例えばダウン症候群。ダウン症候群は21番目の染色体の対が2本でなく3本になっているのだ。
ダウン症候群は最近では長く生きられるようになってきたが、そうでない染色体異常もある。
その一つに18トリソミーという病気がある。これは18番目の染色体の対が3本になっている病気である。心臓奇形や見た目にわかる奇形精神運動発達遅延などがあり、生まれて1年以内に90%が亡くなる病気である。
そういう患者さんとその両親に医者は何ができるか?
両親とできるだけ一緒にいられる時間を作ること、これが最重要。医療を行うことで、限られた一緒にいられる時間を減らしてはいけない。そのためにも病気についてしっかり両親に理解できるよう説明し、その子に医療をどこまで行うかをしっかり考えてもらわなくてはならない。そして医者はその両親の意向に従って、医療を行っていく。
ただ、生まれて間もないのに、死のことを聞かされるわけで、すぐに両親が自分の子の死を受け入れられないのが当然である。治療について急いで決断させたりしてはいけないし、両親がすぐに決断できるわけがない。急がせることなく、納得したうえで医療を行っていく。
そうして、その子にとって“やさしい医療”が始まるのである。
| 2000年1月13日(木) なんかだるい |
なんかだるい。
医者という仕事。毎日医療をおこなっていくことはもちろん、時間がある時に勉強をしていかないと、いわゆる“ヤブ”になってしまう。現在入院依頼も少なく、また夜中でも病院に呼び出される当番(オンコール)でもなく、時間的にも余裕がある。なのに、何もしたくない。やる気がしない。だるい。
もちろん仕事はきちんとしている。健診も行って来た。手を抜けば死につながるような職業であるから、必死で仕事をし、頭をフル回転させている。
ただ、なんかだるいのだ。明日は厳しい予後について親に説明しなくてはならないのに…。しかも2家族も…。
助けて…。
| 2000年1月10日(月) チュッチュ、その後 |
首にチュッチュされてから、ちょっと変化が見られた。変化が見られたのは赤ちゃんではなく、私である。
泣いているときはもちろん、寝ているときでも抱っこしたくなった。「先生、危ない!」「もしかして大人の女性には興味がないのでは?」とまで言われてしまった。でもね、かわいいんだ。もうすぐ退院だし、かわいがってあげたいんだ。
一方で、私のカンガルーケアを見ていた家族から、「うちの子もしてくださいね。」とお願いされた。ま・か・せ・て!
だんだん新生児科を去る時が近づいてきた。ちょっと寂しいなあ。
| 2000年1月7日(金) がんばれ産科 |
生まれてくる赤ちゃんの90〜95%は正常な赤ちゃんです。だから極端なことを言えば、超音波検査をしなくても「正常です」と言えば、ほとんどが当たってしまうのです。残りの異常の赤ちゃんを見つけられるか、またその後の対応はどうか、が問題なのです。
ある産科があります。料理はフランス料理。プールもついて、部屋もゴージャス(料金はちょっ高め)。お母さんにとっては居心地がよく、評判もいい。広告も上手。しかし、そこの産科はいざ異常があったときの対応がめちゃくちゃ、最悪である。例えば、1500gの低出生体重児を自分の病院でみていたりしていた。普通なら新生児専門の医者のいる病院に送り、管理をしなくてはならないくらいの体重である。
あまりにひどいため、その地域の産科・小児科界から批判をうけていますが、改善なし。でもお母さんには人気。お母さんにはそんな産科を見分けることはできないし…。がんばれ産科!(上の例は、一応フィクションということにしておきます。)
| 2000年1月3日(月) チュッチュ |
両親が里に帰って、面会がない赤ちゃんがいます(主治医は私)。最近抱っこもしてもらっていません。
その子は800g台で生まれ、もう3ヶ月になり、明らかに愛情を欲しがっています。仕方がない。主治医参上!
早速、抱っこしてあげた。しかも今回は特別!縦抱きして体を密着させる、カンガルーケア(詳しくは『子供のお話』参照)である。
しばらく抱っこしていると、私の首のあたりがしっとりしてきた。看護婦さんに聞いてみると、「この子、先生の首をチュッチュしている。」かわいい奴だ。でも「汚い!」とか「しょっぱそう」なんて言われてしまった。
汚くてもしょっぱくてもいいよね。おなかがすいていたためだとは思うけど、「私、主治医の先生が好きだから、チュッチュしたの」と答えなさいね。そう答えたら、また抱っこしてあげる。
| 2000年1月2日(日) 鬼門 |
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
今年は5月までは今の病院に勤め、5月以降は大学病院に戻ることになっています。大学病院は働く環境としては劣悪と聞いているので、帰りたくない、というのが本音です。周りの先生からも「君の笑顔が大学病院でいつまで見られるかなあ」なんて言われたりする。
私の2000年問題はこのことであり、世間の2000年問題が落ち着いた後にも私の問題は続いていくのである。たぶん、その頃から更新頻度も低下するだろう。
今年は私の医者生活の最初の鬼門かな。