英国探検隊(第2回)
Hill Figure巡り -その1- The Long Man of Wilmington
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イングランド南部の地層はドーバーの崖でお馴染みのチョーク質でできている。だから、緑の草でおおわれた山の斜面を彫刻刀で削るように表面の草や土を取り除いていくと、緑をバックにした白い巨大な絵が現れる。これが Hill Figure である。

Hill Figure を初めて見たのは、15年程前、Salisbury から Bath へ向かう列車の中からだった。窓から遠くの方に小さくホワイトホースが見えた。ガイドブックに、列車から見た Westbury のホワイトホースについてのコラムが載っていたので、なーんだ!これのことだったんだと思ったが、その時は京都の大文字みたいなものかと、特に気にとめなかった。しかし、その後別のガイドブックに、どう見ても Westbury のホワイトホースとは違う形のホワイトホースを発見した。ということは、他にもあるのだろうか?疑問に思って調べ始めた。そして、Sussex や Wiltshire あたりの詳しい地図をじっくり見ていると、Hill Figure のマークがいたる所についていたのだ!

Westburyのホワイトホース
2回目は間近で観察
ちょうど清掃中だった

しかもホワイトホースという馬の姿を描いたものだけでなく、十字架やライオン、人の形をしているものがあることもわかった。

今回はその中のひとつ、イングランド南部 Sussex 地方の Wilmington という村にある大男の Hill Figure へ向かった。訪れた日は快晴で緑は青々と美しく、太陽がキラキラ輝く4月とは思えないお天気。 Wilmington は何もない本当に小さな村だった。細い小道を車で進むと、いきなり視界が開けたかと思った瞬間、緑の斜面がぐーーっと広がり、その中腹に大きな男の人が両腕を広げ、両手に杖か棒をもっている Hill Figure が現れた。

この身長236フィートのミステリアスな巨人の絵は、長い間、考古学者や歴史学者の論争の的となっている。しかし、その正体は謎だらけ、今だに解明されていない。1710年の文献がもっとも古いものらしいけど、誕生はローマ時代やサクソン時代にさかのぼるとか、中世にWilmington村のお坊さんが描いたものであるとか、いろんな説がある。

Wilmingtonの背高男
B&Bの看板にも...

道路を挟んで向かいの駐車場に車を止める。Footpath to Long Manと書いてある木の立て札にしたがって進むと丘まで登れるようだ。しんどいことはなるだけ避けたい主義の私たちは途中まで歩いてみたが、すぐに断念しLong Manを背景に記念撮影。なぜこのような大きな男の人の絵が丘の斜面に描かれているのか不思議に思うこともなく 当たり前のように風景と一体化している。それに、この周辺にはVisitor Centreはおろか、お店も人の気配も全くない。Wilmingtonの人たちにとって、生まれるずっと前から存在する、あって当然のものなんだろう。

このミステリアスな大男にまつわるいろんな言い伝えや物語りは、数多く語られてきたみたいだ。なかでもお気に入りのお話にイギリス児童文学作家エリナー・ファージョンが書いた『ウィルミントンの背高男』がある。
あらすじはというと、、、

・・・
きれいずきで頭から足の先まで真っ白の7人の姉妹が Wilmington の村に住んでいました。
ある日、彼女たちは海岸で木の下に捨てられていた小さな男の子ウィルキンを見つけ、家につれて帰りました。ウィルキンは何年たっても小さな男の子の大きさでしたので、いつも大きくなりたいと願っていました。
そんなとき、煙突の上から下を見下ろすと自分が大きくなったように思えたので、煙突掃除の仕事をはじめることにしました。ところが、ウィルキンがすすまみれになって帰ってくるようになってから、きれいずきな7人の姉妹は掃除に疲れ果ててしまいます。ウィルキンをとても愛していた7人の姉妹は彼からお気に入りの仕事を取り上げるわけにもいかず我慢し続けましたが、とうとう耐えられなくなり海岸の7つの崖になってしまいました。
ウィルキンは世話をしてくれる7人のおばさんたちが行方不明になって途方にくれ、探し続けます。ついに7つの崖がおばさんたちであることをつきとめ、帰ってきてくれるように頼みますが、自分が愛するおばさんたちを苦しめてきたことに気付き、ひとりで家に戻り一生煙突掃除を続けました。ウィルキンが亡くなるとおばさんたちは崖から出てきて、小さなウィルキンが願っていたように、
彼のために大きな男の人が描かれたお墓を作ったのです。
・・・

Seven Sisters
の3姉妹くらいがみえる
全部見るには少し離れた
Seaford岬へ
Seven Sisters Country Park
を流れるCuckmere川
昔、密輸船のルートとなっていたらしい。。。海岸までは川に沿ってまだまだ歩く

このお墓が、Wilmington の緑の丘の斜面に残っているという訳。
そして、7人の姉妹は、今では Seven Sisters という名の白い崖として見ることができる。


<参考にした本>
エリナー・ファージョン(石井桃子 訳)『ウィルミントンの背高男』(『ファージョン作品集(5) ヒナギク野のマーティン・ピピン』収蔵)岩波書店


(続く)