アイルランド探検隊(第4回)
- Bog Tourでピート掘りを見学 -
ロザリー・K・フライ原作の『フィオナの海』(矢川澄子訳 フィオナの海 集英社)は、
スコットランドに伝わるアザラシの妖精セルキーをモチーフとした不思議な物語である。
映画では舞台をアイルランドに移して、より幻想的なムードでストーリーが展開する。
物語は、父親と町に出たフィオナが都会生活になじめす、
おじいさんとおばあさんが住む島にひとりで帰ってくるところから始まる。
島にもどったフィオナは、いとこのイーモン(原作ではローリー)と仲良くなり、
行方不明になったフィオナの弟を探し出そうと、
いまは無人島となっている小さい頃住んでいたローン・イニッシュ島(原作はロン・モア島)に帰る計画を練る。
フィオナたちは、おじいさんとおばあさんに内緒で、毎日ローン・イニッシュに渡り、
廃虚になった家のわらぶきの屋根をふき替え、壁を塗り直し、窓ガラスをピカピカにみがく。
そして、暖炉にくべるピートをイーモンが掘り出す。
ピートとは泥炭のことでウイスキーをつくるときに重要な材料として使われるけれど、
資源の乏しいアイルランドでは大切な燃料としてもかかせないようだ。
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アスローンの町並み |
シャノン川を背景にした クロンマックノイズ修道院 |
ダブリンから西へ、アスローンを通り過ぎてシャノン川沿いに走ると、
道路の両側は見渡す限り泥炭の原野になる。
所々に道路を横切る線路があり、鉄道が走っているはずはないのだけれど、
と思っていると、トロッコのような小さな列車がやってきた。
なんとピートを運搬する列車用の線路だった。
列車に乗っていたおじさんのひとりが降りてきて、
道路を確認してから遮断機代わりのゲートを閉め、列車はのろのろと道路を横切る。
これだと、踏切り事故は起きそうにないが、なんだかすごくのどかな眺めである。
クロンマックノイズ修道院跡に近づくと、
道路沿いのあちこちの民家の庭にピートがうずたかく積み上げられている。
こんな光景をみていると、確かにピートはアイルランドの生活必需品なのだと思う。
シャノンブリッジという町にはピートを原料とする発電所もある。
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見渡す限り、泥炭の原野 |
ピートを積込んだ列車が 道路を横切る |
その発電所のすぐ近くにBog Tourという看板が出ていた。
「ヨーロッパでこんなツアーはここだけ」といううたい文句がついている。
そんなめずらしいものをみすみす逃すわけにはいかない。
Bog Tourとは廃線になったピート運搬用の鉄道を観光用に再利用したもののようだ。
ピートの原野をひとまわりして、
途中、いろんなガイドとピート堀の実演をしてくれるとのこと。
出発時間になると結構たくさんの人が集まってきて、列車に順々に乗り込む。
このあたりは湿地帯でそこらじゅうにシャノン川の支流がくもの巣のように流れていて、
小川にはばまれて行き止まりという道路も多い。
というわけで、人間があまり入り込めないこともあり、
野鳥や湿地帯のめずらしい植物の宝庫となっている。
そんな原野の中を私たちが乗ったツアーの列車は、
さっき踏切りで見たやつと同じような速さでゆっくりと走り出す。
乗り心地が考慮されているわけはなく、
列車の振動にあわせて、地面に敷かれただけの線路がガタガタとゆれているのがわかる。
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Bog Tour の列車 |
熟練の技がさえる? ピート堀りの実演 |
途中で列車は停車し、ピート堀の実演タイムである。
おじさんがふたりいてひとりが堀り、もうひとりがそれを受け取るといった具合で、
絶妙のリズムで作業が進む。
掘り出されたピートはみんな一定の大きさになっていて、レンガのようにきれいな形をしている。
列車に乗っていた男の子が試しに掘ってみろと言われるが、
形は崩れるし、リズムも合わないので、お手上げ。
掘られたピートは乾燥させるために地面に並べられる。
観光客は思い思いにピートを手にとってみて、においをかいだりしている。
ツアーのあと、売店でピートをお土産に買って帰ろうと思ったがもはや売り切れていてなかった。
しかたなく、自宅で暖炉の気分でも味わえるかと、ピートでできたアロマなるものを買って帰った。
このアロマの話はまたの機会に。