アイルランド探検隊(第6回)
スケリグ -その2-
その1も読んでね!

スケリグ島の歴史は、古代のロマンあふれるケルト神話の時代にまでさかのぼる。

時は紀元前のはるか昔、ダーナ神族がアイルランドを支配していたころのお話。
西の海から上陸して来たミレー一族は、詩人の予言にしたがって戦いを延期し、一旦海に退くことにした。それを見たダーナ神族は、魔法でミレー一族の船を難破させてしまった。けれども、その後の戦いで、結局ダーナ神族はミレー一族に滅ぼされ、勝利したミレー一族は地上を支配し、敗れたダーナ神族は地下に逃れた。地下の世界で暮らすダーナ神族は、今では妖精として人々の前に現れるのだそうだ。
この伝説で、ミレー一族の船に魔法がかけられたのが、スケリグ島のあたりではないか、と言われている。

また、紀元200年頃には、フィンが率いるフィアナ騎士団と戦った王様が、戦いの前にスケリグ島で休息をとったという言い伝えもある。

そして、実際にスケリグが始めて歴史に登場するのは5世紀の終わりとのこと、マンスター地方の王様が争いを逃れてここにやって来た、というのが最初らしい。続いて、6世紀に入ると、St. Fionan が bee-hive と呼ばれる石作りの質素な礼拝堂をつくって、修道院を営む。その後、度重なるヴァイキングの襲来に苦しみながらも、修道士たちは、スケリグの厳しい環境の中で、祈りと修行の日々に明け暮れたそうだ。

前回のリング・オブ・ケリーの旅で、Portmagee の町に着いたのは、結局、お昼を過ぎてからになった。しかたなく、対岸のヴァレンシア島にあるスケリグ・ヘリテージ・センターを訪れのだけれど、アトラクションでスケリグ島に渡った気分を味わっただけで、イベリア半島をあとにした。

昔の修道士はこんな船で
スケリグに渡っていたらしい
さて、今回はCahersiveen に程近い丘の中腹にあるB&Bで2泊、という余裕を持った計画。もちろん、ボート・トリップもすでに日本から予約済み。今度こそ、準備万端、完璧である。(お天気を除いては)
Cahersiveen の町
B&Bからの眺め

宿に着いたその日は、夕方だと言うのに、強い日ざしが照りつける夏の日で、
見晴しの良い部屋の窓には、Portmagee 海峡にキラキラと反射するまぶしい光が差し込んでいる。
B&Bのご主人も「明日は絶対に大丈夫!天気予報も晴れると言っていた」と太鼓判を押してくれた。

翌朝、起きると同時に、何はともあれ部屋のカーテンをあけてお天気チェック。おやっ、昨日のまぶしい太陽はどこへやら、ヴァレンシア島には低い雲がたれこめ、いつ雨になってもおかしくない空模様。

朝食のとき、心配顔の私達に今度はB&Bの奥さんが、「大丈夫、船は出ますよ。全く心配ないですよ」の一言、ほっと一安心である。
朝食は、今から船に乗るというのに、ボリュームたっぷりのアイリッシュ・ブレックファスト。食べる量を減らしておいた方がいいかと考えながらも、おいしいのですっかり平らげてしまった。

予約をしておいた船は、Cahersiveen から出発するのだけれど、途中、Portmagee にも寄ってくれるので、どちらからでも乗ることができる。船酔いのことを考えて、少しでも距離の短い Portmagee を選んでおいた。

portmagee に到着
サンドイッチを買ったお店

曇り空の下、出航時間の30分くらい前に Portmagee の港に到着。すでに、スケリグ島に向かうらしき、何隻かの小船と数十人の観光客が桟橋にたたずんでいた。
どんな船に乗るのだろう。アイルランドの辺鄙な沖で海に投げ出されたらどうしよう、、、これは、日本を出るときから一番の心配事であった。

しかし、そんな考えも食い意地には負けるようだ。ふと、お昼ごはんを買っておくように言われていたことを思い出した。なにせ、スケリグ島はトイレもパブもお店も何もない無人島なのだ。
港のすぐ脇にあるしゃれたティー・ルームで、ミックスサラダ・サンドイッチとハム&トマト・サンドイッチを頼んだ。注文を聞いてから調理をしてくれたので、出来上がるのを待っている間、ウィンドウの中のケーキ類についつい目がいってしまう。あっ、ミンスパイがある。これも追加で購入。

そろそろ、時間が近づいて来たので、ふたたび桟橋に戻ってみる。先程の観光客は停まっている船に次々と乗り込んで、出発を今か今かと待っている様子だ。で?どの船に乗るのだろうか?B&Bの奥さんにもらったカードによると、Seanie Murphy さんの Sea Quest と書いてある。
桟橋のあたりをウロウロしていると、ニコニコ顔のおじさんが近づいてきた。
「アイリーンの紹介?」(いつもに増して、聞き取りにくい英語)(アイリーン???いきなり、アイリーンと言われても、、、そう言えば、B&Bの奥さんの名前はアイリーンさんだったような)
「そう、そう」
「船は、Cahersiveen から来るから、もう少し待っててくれ」(と理解できる。多分)

portmagee の港
ボート・トリップの看板

待つこと、5分。
来た来た。それらしき船が東の方からこちらを目指してやって来るのがわかった。やっぱり桟橋に漂っているのと同じ漁船のような小さな船だ。これは揺れそうな予感。念のため、薬局でよく効くと言われて買った酔い止めの錠剤を飲み込んで、近づいてくる船の方へ向かった。

そして、これから(昔の修道士とは比べるべくもないけれど)25m泳ぐのがやっとの1名と高所恐怖症の1名、計2名の苦難の旅路が始まることになった。


<参考にした本>
井村君江『ケルトの神話』ちくま文庫
Des Lavelle: The Skellig Story, The O'brien Press

(続く)