昨日の日記はいくらなんでも暗すぎた。
大体、おばあちゃんに席を譲ってどうして落ち込んでなきゃいけないんだ。もっと胸張れよ、自分。だれも見てなくたって別にいいじゃんか。
欲しいものを欲しいと言い張れないことと、おばあちゃんに席を譲ることは、たぶん次元が違うんだ。そう思いこんでおくことにしよう。
---- 親しい友達とは離ればなれになるわ、縁結びおみくじは柏木だわ(←まだ言うか)、私生活はお寒い限りだが、仕事には相当恵まれていると私は思う。
みなさんは今年4/7の日記を覚えているだろうか。覚えていないならこちらから飛んで7日の記事をお読み下さればいいのだが、4月のはじめ、研修でプランニングとグループワークをやるプレゼンテーションの実習があった。
日記には書かなかったがこの実習、実はプランニングの間に指導役で先輩社員が何人かやってきていたのである。私の班は私がプランを練ったので、当然私が指導役の先輩社員にばんばん質問をした。
指導役の人は10人前後やってきたと思うが、これが実は、もろに今の部署の先輩たちだった。私は3人の人に質問をしたが、どの人も顔をよく覚えていた。合宿で指導してくれた先輩の次によく覚えている。2人は女性で、スタージュエリーさんとアップルさん、後のひとりはシュンスケさんという男性だった(全員仮名)。
アップルさんはおとなしそうな人で、やさしめのアドバイスをくれた。次に聞いたシュンスケさんは私の勢いに気圧されそうな感じで、指導にはまだ経験不足な感じがした。最後に質問したスタージュエリーさんは終始にこにこ顔ながら、恐ろしく厳しいポイントをずばずば指摘し、とても面白かったことを覚えている。
部署に配属されて自己紹介する時、フロアを見渡してぞっとした。全員いる。あの時質問した人が全員。あろうことか、あの時指導にやってきた人が残らずいる。
口をあんぐり開けたあの日から2ヶ月、私は優しく指導してくれたアップルさんと最小単位まで一緒のチームにおり、にこにこ顔で厳しいやりとりを行ったスタージュエリーさんからは何かととてもよくしてもらっている。
アップルさんは美人で賢く、第一印象通り優しい。ポメラニアンとか白いスピッツとか、高級小型犬のような感じだ。
スタージュエリーさんは今年30になるがニューヨーク帰りだとかで、太めの体型ながら持ち物も服装もスタイリッシュ、ターコイズブルーのアイラインがよく似合う。きつい仕事を抱えている時も笑いを絶やさない大阪出身の女性で、頭のいい、仕事のできる人だ。入社してからまだたったの2年なのにたくさんの仕事を抱えている。
周りは年下ばかりという年齢のハンデを持ちながらそれをものともしない強さに本当に尊敬する。おいしいお店をよく知っていて、私はもう2回も飲みに連れて行ってもらった。地方出身の私に親切にしてくれるお姉さんのような人でとても頼りになる。見習わなきゃと思う。
(おまけだが、シュンスケさんは印象通り、まだ経験不足だった。入社からの日が浅く、私と年も違わないことが判明。)
私はこの研修の時、スタージュエリーさんとしゃべりながら「……何か、私のキャラと似てるなぁ」とずっと思っていた。「私って、仕事を頑張ったらこういう人になりそうな気がする」という感じが漠然としたのである。妙な直感がはたらいたものだ。
(そのことをわかっているのかいないのか、私の教育係のスウェーデン先輩は「スタージュエリーから"スタージュエリーイズム"みたいなもんをよーくたたき込んでもらった方がいいぞ」と私に言う。全くその通りだと私も思う。)
思えばこの研修がきっかけで、私は今の部署を希望したのだ。まさかこの部署にいるのがあの人たちだとは思いもせずに、思いつきで口走ったのがまっすぐ聞き届けられてしまった。
---- ところでこの研修、もちろんスウェーデン先輩も指導に来ていた。
部屋の中にたくさんのグループがわあわあやっている中、ひとり飄々と回遊するサメのように歩き回っている男性社員がいた。
背が高くて、強面。興味があるのかないのかよくわからない顔をしていて、目つきが鋭くてひどく怖い。かけているめがねも鋭角に切れ上がった「ギョーカイサングラス」といった風情で、恐ろしい。スーツも黒いし、怖い。一体何者なのか、雰囲気も何かとげとげしい。来ていた人たちの中で飛び抜けて一番に怖かった。BGMはどう考えてもジョーズのテーマ。あるいは、ダースベイダーのテーマ。
(すごく怖い。……あの人にだけは質問すまい。)
つまりそれがスウェーデン先輩である。
あの時に顔はしっかり覚えた。何しろ怖かったのだ。
研修で会った全ての社員の人たちの中で最も第一印象が怖かった。そんな最恐の人にピンポイントで教育係をやってもらっている今の自分が、我ながら面白い。あははは。
先輩社員なんて数え切れないほどいるのに、最も第一印象が怖くて、研修時におそるおそる遠目に見ていた人が今は隣の席で教育係をしてくれている。私の人生とは衝撃のカケラが固まるだけ固まったチョコレート・バーみたいなものだ。かぶりつきで衝撃を味わいつくすおもしろマイ・ライフ。次の展開から目が離せない。
---- 見た目は恐ろしい(たぶん仙台にいる私の友人のみなさんは、一目見て一様に後ずさるだろう。初対面でも平気で会話できそうなのは、タウン誌編集をしている友人くらいだろうか)が、スウェーデン先輩はとても面倒見がよく、弱い者に優しいという、とてもいい先輩である。
部署に配属されてから週替わりでいろんな先輩にくっついて仕事を教わったが、その時いちばんはじめについたのもスウェーデン先輩で、まだ先輩のキャラクターも「怖い」以外はよくわからなかったため、その時の衝撃たるや言葉も出なかった。
挨拶に行った時のスウェーデン先輩の服装といったら、白ジャケットに黒パンツで黒のレザーのネクタイといういでたちだった。そしてあの怖いめがね。机の上にはなぜかスウェーデンの旗。雰囲気の怖さもそうだが、言動も結構過激そうだった。自己流の言語を持っていて、「エロい」を「very good」とか「so cool」の意味で使う。
でもはじめの1週間でいい先輩であることはとてもよくわかった。ディテールは怖いが、努力家で前述の通り弱い者に優しく、面倒見がよい。案外根は暗いようで、大学デビューするまではおとなしい少年だったらしい。ちなみに、私とは4ヶ月しか年が違わないらしいが、見た目上はとてもそう見えないのでよかった。
過去の経験上、私はちょっとこわめで破天荒な武鬪派タイプの人とは仕事がうまく行くので、スウェーデン先輩が教育係なのは願ったりかなったりである。
---- たぶん神様は、私に仕事をするには最高の環境を与えてくれていると思う。私の人生こんなんばっかりだが、仕事の環境だけは文句のつけようがない。
頑張って残業してお金を貯めて、いっぱしに仕事ができるようになりたい。こうなったら、神様の言うとおり、死ぬほど仕事をして、私生活なんて残業の中に埋まりつくして見えなくなるくらいになってやろうかと思う。どうせ土日に会う人がいないと孤独死しそうな程のストレスを感じるのだから、その分仕事をしちゃってもいいくらいなのだ。
ワーカホリックになってやりますとも、ええ、何の足かせもありません。すべてはあなたの言うとおりに。ねえ神様。
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