さあ、どこからでもかかってこい。

 

 

 

03/2/17(月) am 人生の帳尻合わせ
現在、風邪を引いて発熱、38度。

土曜の夜から発病し、熱が上がったり下がったりを繰り返す。頂点が38度台後半、底辺が36度台後半のサインカーブ。

ずっと寝ていれば治ると思ったが、今日の午後7時になって体温が39度台に突入してしまったので、自力で夜間病院を調べ、自分でタクシーを呼んで病院に行った。

こういう時のために、住民票を移した時にもらった区民ガイドをどこにでも目に付くところへ置き、ずっと前に郵便受けに投げ込まれていた区の総合ガイド誌を取っておいた。それが見事に功を奏し、区民ガイドで夜間病院のリストを見て問い合わせた私は、ガイド誌で近所のタクシー会社からタクシーを呼んで、世田谷の近所の病院に行った。

熱に浮かされ、絶え間なく寒気とふるえが襲う中、ひとりで真っ暗な待合室で診察を待つ。なぜかストリート風の若者が待合室に数人いる。今すぐ診て欲しいだるさだが、わがままを言う相手も甘える相手も居ない。私の家から3駅のところにいる弟に今日の朝電話をかけたが、冷たい雨を嫌がってうちには来てくれなかった。

20分ほど待たされ、診てくれたのは若い女性のお医者さんだった。やや安心しながら、帰りのことを思ってため息をつく。本当はこんなだるい体で買い物をして帰りたくないが、そうしなければ明日食べるものがない。薬も飲めない。

すっぴんの顔と特になにもしていない髪というひどい状態で、病院向かいのコンビニに入る。唯一の救いは、睡眠時間がたっぷり取れている分、髪も肌も水分を含んで普段より張りと水分があることくらいだ。

帰りのタクシーを拾ったら、タクシーの運転手さんに「何、誰か入院してんの?」とたずねられた。「いえ、私が診てもらってきたんです」と言ったら、「いやあ、元気そうだから別の人かと思ったよ」と運転手さんが笑う。

私は、今更ながら自分の強さに愕然とする。寒気はまだおさまらない。たぶん体温もまだ38度はある。ひとりで自分の面倒を見ることになれてしまった女は、辛い時に辛い顔すらできなくなるものか。

GAPの赤いダウンジャケットと、同じGAPの赤いボーダーのタートルネックのリブニット。ジーンズにスニーカー。確かに格好だけは元気そうに見えるものばかりになってしまったけれど。

外は冷たい雨が上がったばかりで、冷え切った黒いアスファルトは満月の光を照り返している。

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家に帰り、もたれた胃に無理矢理お粥とヨーグルトを流し込み、苦くて顔をしかめるような風邪薬を飲んだ。体温はまだ下がらない。

テレビをつけると、家を改装するというバラエティ番組をやっていた。夫の他界した豆腐屋の奥さんが、改装された部屋に足を踏み入れて目を丸くする。夫ゆかりのものが別の物に姿を変えているのを随所に発見して目を見張る。きっとお父さんも喜んでいる…と彼女は呟いた。

それを見ながら、私はなぜだか涙が止まらなくなった。彼女はひとりなのに、ひとりではない。永遠を信じられる何かが私にもあったらいいのに。そう思うけれどどうやったら手に入るのか、皆目見当もつかない。

あーあ、自分の人生の帳尻を自分だけの手で合わせるのには、もういい加減慣れたはずなのにな…。激ヤセしたときも院試に落っこちた時も、就職活動がお先真っ暗だったときも、ストレス性の病気とは言えない体調不良にたびたび悩まされながら、それでも私は自分の力で一生懸命やれてきたのに。

こんなに苦しくて熱の高い日には、愚痴のひとつも言っていいだろうか。人生は不公平だと叫んでいいだろうか。自分の不備を棚に上げて、泣き叫んでいいだろうか。「お前に似合う言葉は、"ルール"と"勉強"」と教育係のワセダ先輩に断言された、潔癖な私を少し休んでもいいだろうか。

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MDコンポのスピーカーから浜崎あゆみが叫ぶ。

"僕には君が必要みたいで、君にも僕が必要なら、そこには特に理由はいらない"

そんな風に言ってくれる人が現れることが、人生の至福ってやつなんだろうな。

 


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03/2/11(火) am 2003年禊(みそぎ)の旅
1月の分も1日分更新されています。

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金曜に休暇を取って3連休にし、また京都に行った。

今回のメニュー。

1日目:三十三間堂→下鴨神社→糺(ただす)の森
2日目:東寺→大徳寺→等持院
3日目:北野天満宮→六波羅蜜寺→清水寺→高台寺→安井金比羅宮

今回は冬の特別公開を行っている寺社を中心に回ったのだが、知らない間に「女の生き様を考える旅」になってしまった。

2日目の大徳寺は芳春院という前田利家の妻・まつが晩年を過ごした寺が特別公開。3日目の高台寺はねねの寺でねねが普段住まいとしていた建物である圓徳院が特別公開。

見てよかったなと思ったのは、東寺の大日如来と、大徳寺の大仙院と瑞峯院の枯山水庭園、北野天満宮の梅苑(これもシーズンだから特別公開中)、六波羅蜜寺の清盛像と圓徳院の枯山水庭園だろうか。

だがこの旅、初日に衝撃的なことがあったので、もうその後のことをあまり覚えていないくらいのものである。

みなさんは覚えておいでだろうか、1年前と少し前の冬、私がやはり京都に行って、「源氏物語縁結びおみくじ」なるものを下鴨神社の相生社でひいたことを。

そう、忘れもしない「柏木事件」である(詳しくは、2001年12月27日の日記参照。いやもう壮絶でしたあれは)。要するに、源氏物語中、記録的に悲劇的な人物になぞらえたくじを引いてしまったのである。他人の物に身を焦がし、才能も将来もきれいさっぱり燃やしてしまった人物。恋愛ストレス死なんてしているのは彼くらいのものだ。

そんな悪夢のようなくじを引いてしまったのだが、これがまた京都の神様、律儀かつ超パワフルなのである。このくじを恐ろしいほどに実行に移していく。こんな膠着状態の私の人生にでかい風穴を開けるようなミラクル(奇跡といえるほどきれいな物ではない。ミラクルと言っておくのがちょうどいいコミカルさなのだ)が、それから4ヶ月後に何度も起こった。ただ私は、柏木のように自分を棒に振るマネはできなかったので、それが大きく違っただけのことで。

このおみくじ、捨ててもよかったがくじの裏にご丁寧に

「このおみくじは、いまのあなたの運です。
次にお詣りになる時までお持ち下さい。」

と書いてあるものだから捨てるわけにも行かなかった。次に行く時まで持っていろというわけである。そこで、今回は早速おみくじを引くところから始めるために下鴨神社へ行ったのだ。

まずは相生社の神様に「頼みます!」とお願い。おみくじをひく。

「はい、19番になります」

巫女さんから手渡されたのは今度は赤い色のくじ(柏木は黄緑だった)。今度のくじは……

薄雲   源氏物語 巻ノ拾九  

「薄雲??」。全く印象の残っていない巻だ。この巻、恋愛なんてあったっけ? 当方、藤裏葉か少女が好みなのですが。

首を傾げつつくじを開けてみる。そこにはまた歌が一首記してあった。

 生ひそめし根もふかければたけくまの
   松にこまつの千代をならべん  光源氏

「……???」

聞いたことがない、こんな歌。内容を見てみる。

「  幸福の兆  ─大吉─

交際  二人のあいだにははいりこむすきがありません。順調に成就するでしょう。

出会い 理想の人に出会えそうです。望みどおりの未来が訪れることでしょう。  」

幸福の兆し? すきがない? 理想の人? 望み通りの未来がおとずれることでしょう!? Oh, NO! こんなパッとしない巻にこんなすごいものがあったのか? 私が縁結びおみくじで大吉!? そんな馬鹿な!(自分をとことんまで信じていない)

文脈が全くわからないから判断のしようがない。一体光源氏は誰にこれを詠んでいるんだ?

早速、京都のジュンク堂書店で調べた。久しぶりに手に取った小学館の新全集で。

光源氏がこれを詠んだ相手は……なんと明石だった。

京都にのぼり、大堰の邸で暮らしている明石は、とうとう娘を紫の上のところに引き取られ、不安で孤独な大堰ライフを過ごすことになる。忍従を強いられて悲しげな明石に、娘もいるし私たちは3人でいつまでも暮らせるよ、と関係の永続性を詠んだ歌のようだ。

何だよ、男の気休め歌じゃないか!!!!!

だがしかし、これをあながち大凶歌とすることもできない。なぜならこの歌が詠まれた後、明石は確かに源氏が詠んだとおり、子供がいるからこその大出世をするのだから。最後は天皇の祖母となり、後世まで幸せ者として名を残す。とりあえず、「波瀾の兆」って思いっきり書いてあって「じっくり検討」しろと言われた柏木のくじよりずっといい。

確かに、源氏物語で一番実のある生涯を送った人ではある。明石の田舎から京に出て、最後は天皇の祖母。この時、田舎から出てきたばかりで、心のよりどころの子供もとりあげられ、孤独であるという境遇は今の私と似ている。

一体どうする気ですか、神様。また無理矢理、膠着状態の私の人生にでかい風穴をぶちあけようという魂胆ですか。

ぶちあけられるのかもしれない。なぜなら京都の神様はひどく律儀で、パワフルだから。

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このコメディーな自分のお話の続きが気になる私は、帰る日の午後にはもう東京行きの新幹線に乗りたくなっていた。私にしては珍しいことだ。無性に東京が恋しくなった。

そしてこのコミカルな日常は、今のところ何にもない東京で続いていくわけである。

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それにしても最近、私は縁結び占いで悪い結果が出た例しがない。そう、ブーケが飛んできたあたりから、おじいちゃんの白蛇夢といい、おかしなことばかり。でもひたすら兆すばかりで、何も実績がないのだが…

 


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