1月、死ぬかと思った…

 

 

 

04/2/17(火) am 核になるより、ヨメに行きたい
年を越して、私はさらに多忙になった。

私のいるチームの中には2系統の仕事がある。片方はゼブラ課長(40・女性)から来る仕事、もう片方はワセダ先輩(28・男性)から来る仕事。

私はあまり仕事を嫌がらないのでばんばん仕事を振り込まれ、ゼブラ課長から来るもので満杯になってしまった。なのに1月は、この上にワセダ先輩からの仕事も1件重なり、もうにっちもさっちも行かないくらい苦しいひと月を過ごした。

それでもワセダ先輩の方の仕事に半分くらいしか時間を割けず、結局ワセダ先輩本人がやる範囲も大きくなってしまって、

「何だよ、俺がほとんどやっちゃってるじゃねーかよ!」

…と、ワセダ先輩に叱られた。

チームの中に、ゼブラ課長の方の仕事のユニットとワセダ先輩の仕事のユニットがあり、私はワセダ先輩の方に入っている。同じユニットのメンバーは他に、スタージュエリー先輩(31・女性)と新人のリボンちゃん(23・女性)。隣の島がゼブラ課長の直轄ユニットで、ここにはフラワー先輩(25・女性)、シュンスケ先輩(27・男性)、グループリーダーのシニヨンさん(35・女性)、新人のアライグマくん(23・男性)などがいる。

ちなみに、チームには学習院先輩(26・男性)のユニットもあるが、そっちは厳密な業務の切り分けなく、比較的自由に仕事をしている感じである。

私はワセダ先輩のユニットにいながらも、もともと教育係だったスウェーデン先輩(28・男性)がゼブラ課長の直下にいたので両方の系統の仕事ができる。そのため、なぜかゼブラ課長の方の仕事がばんばん来て日々が満杯になってしまい、大変な思いをしている。

ワセダ先輩としても、自分が育てたというのに自分の仕事を引き渡せず、砂を噛む思いをしていることであろう。部下をなまじ両方できるようにしてしまうとゼブラ課長に引っ張られてしまうことが理解できたのか、今年下に入ったリボンちゃんについては、ワセダ先輩は絶対にゼブラ課長の仕事をさせないようにしている。極めてコドモっぽいが、本質的でいい方法だ。

私はワセダ先輩系統の仕事もしないと、自分にスキルがたまらないことを理解していて、そっちの仕事ができるように心を砕いている。だが私ごとき下っ端レベルが頑張っても限界はあり、ワセダ先輩が「連打屋がこっちの仕事をしてくれないと困るんだ!」とゼブラ課長に主張してくれれば私も動きやすいものを、ワセダ先輩がおとなしくて何も言わないから、あれよあれよとばんばん仕事を入れられてしまう(ワセダ先輩は、頭が抜群にいいのに器が小さい。自分より強いものに対して怒れない)。

でも私は、やっぱり両方の仕事ができるということが自分の売りでもあり、それがなくなったら使えない人間になってしまうことを理解している。器用貧乏でもやっぱり、いろんなことがわかる人間は使いやすいのだ。

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そんな状況の中、異動希望の面接が行われた。他部署や他の業務への異動の希望について、課長と一対一で面談する。

私はまだ2年かそこらで異動するつもりはなく、結構面白い仕事なのでこのままのスキルアップを望む旨を課長に伝えた。するとゼブラ課長から、

「連打屋ちゃんには今後うちのチームの核になる人員になってもらいたいと思っているの」

…と、きっぱり言われてしまった。

(……オーマイガッ)

今のチームは女性が極めて多く、ちなみに言うとゼブラ課長以外の女性はみんな独身。シニヨンさんすら結婚していない。アマゾネスか大奥かといった風情である。そんなところで、いきなり「核になってもらうから」的発言は私を震撼させた。

つまりは認められたということだが、しかしながら、このような激務チームで認められてしまったら、私は一生ヨメに行けない。ひとりぼっちで働きづめではないか。

しかもこの部署は今後本体から切り離される可能性を持っており、もしこの組織に固定されたまま本体から切り離されたら、私の給料は下がる。それだけは絶対やだ。

今度入院する時は、ひとりぼっちな上、入院資金も捻出できないかも知れない。それなら死んだ方がマシだ。

そう思い、今日の衝撃をメールで打ったら、スタージュエリー先輩から電話が来た。

「連打屋ちゃん、ずいぶん認められたねえ。私は嫁に行くよ」

「そんな! 置いてかないでください、私もヨメには行きたいです!!!」

「期待の人材だねえ。課長は大期待じゃん」

「やです!! 嫌だ!!」

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ふと思い返してみよう。ゼブラ課長と私は、家庭環境や属性が実はそっくりなのだ。

ゼブラ課長は九州出身、両親はともに教員。都内の有名国立大学を卒業して、女性総合職第1号の頃に入社。私の会社でおそらくたった二人しかいない女性課長の片方である。しかも、はえぬきの女性課長となると彼女しかいない。

地方出身で両親が教員とか、国立大卒とか、私と彼女は似たような経歴を持っている。そのせいなのか、彼女にとって私は「使いやすい」人材らしい。一方、スタージュエリー先輩は都内有名私大を出た後ニューヨークに留学して大学院を卒業し、言うべきことはきっちり言うタイプ。そのためか手軽な使い方はできないらしい。

(…そういえばうちのチーム、国立大卒は彼女以外は私しかいなかったような…)

大学で差別するわけではないが、有名私大卒と国立大卒は、やっぱりどこかで考え方が違っているような気がする。国立大卒の方が、よりハングリーというか、泥臭いというか。遊ぶのもヘタクソだ。

個人プロフィール的な部分でも、私はどうもゼブラ課長にシンパシーを感じられちゃっている気がする。そういういろいろなものが重なって使いやすく、そのごく簡単な一点のみで私を手放したくないという結論に至っているらしい。

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ゼブラ課長はマネジメントが非常にへたくそだ。部下の火の粉を決してはらってくれない。私がもし彼女にがっちり掴まれてしまうとしたら、めんどくさい仕事ほど私にふられ、それを自分ひとりの力だけで飲み下さなければいけない羽目に陥ることだけは間違いない。

困ったことになった。

まあ、立ち止まって考えてみよう。私は今度の誕生日(3ヶ月後)で28歳になる。彼氏はいない。結婚の見通しも立たない。

そんな中、おそらく会社で最も屈強な女性課長に目をつけられ、後継者として育成されかねない勢い。課長は若い頃美人だったため、とっくに社内で相手をつかまえて結婚し、夫婦そろって管理職だからいいが、私なんてこのお寒い状況。いつになったらヨメに行けるかわかったもんじゃない。

子孫も残さずこのまま死ぬのか、自分。ひとりで入院し、ひとりで死んで、葬式に誰も来てくれない。私が生きている意味って、何? 天国のじーちゃん、この私の今の姿を見てるなら、どうか教えて。

何となく、今年中に再び入院するような気がしてきた。今度入院したら、私はコドモを生めない体とかになってしまう気がする。余りに恐ろしくて最近連日のように豆腐などの大豆食品を食べている(予防のために)。

占いが特集されている女性雑誌を買って読んだ。「あなたのカルマは"孤独"です」…やっぱりね、そうだと思ったよ。誰も助けちゃくれない。

たくさんの人が、めまぐるしく私の前を通り過ぎる。けれど誰も、私の人生に本質的には関わってくれない。親さえも、金銭的なつながり以上のものを求めることができない。私はどうしたらいいんだろう。気が変になっちゃうよ…

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実のところ、私はいずれこうなることを見越して昨年末に身辺整理を行い、自らをまっさらなひとりぼっちにしてある。これまで結論が先延ばしになっていたものに決着をつけ、今年の年始で全部断ち切った。それに付随していらなくなったものを全て捨てて、リニューアルした。物質的にも、精神的にも。

何となく、何の雑念もなく仕事に向かわなければいけない事態が訪れるのではないかと思い始めていたのだ。昨年の後半から。自分の私生活に余計な希望を持たず仕事のみに向かい合う悲劇的な状況があり得ると。…見通しのいい話で涙が出る。

ああ、叫びたいくらいにひとりだ。悲鳴をあげても、誰の耳にも届かないくらい、崖っぷちにひとりきり。両手を広げて崖下に落ちることもできるし、全力込めて崖をよじのぼることもできるし、このまま立ちすくんで泣き続けることもできる。

私は、どうしようか。どちらにしろ、誰の助けも来ない。みんな崖に立たされた私を見下ろしながら、上空を通り過ぎていく。

死にたいくらいの、ひとりぼっち。連打屋の人生は、またも混迷を極めていきます。

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だけど、こんなことくらいで考えすぎて鬱病になるのも、あほらしいし。仕事ごときで再起不能なくらいに精神的ダメージを受けるなんてばかげてる。それだけは確かだ。

どうせ、誰がやっても同じなんだから。仕事なんて。

それを考えると、私がやるべきことはこの崖からテレポーテーションして別の場所に行くことだ。

だけど、テレポーテーションなどという神業のためには人並み外れた精神力が必要だし。それをやるには、今は疲れすぎている。

本当に、なんというか、どうしよう。…じーちゃんはじめご先祖さまたち、今度ばかりは本当に、天国から全身で私を助けて。子孫は大ピンチですぞ。

 


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