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近年、鋳物作りの教育的効果が注目され、様々な所で鋳物作り学習を折り込んだ教育実践や公開講座が行われています。鋳物作り学習では、「ものづくり」の楽しみを直接的に体験することができ、また、美術(立体造形)、理科(物質の状態の変化)、歴史(銅鏡、銅鐸、金印、奈良の大仏などの鋳造品)、技術家庭(金属加工)などの教科や、環境問題に関する学習(アルミ缶リサイクルなど)などを複合的に組み合わせることが可能です。
しかしその一方で、鋳造作業には、例えば高温の溶融金属を取り扱う必要があることなど、いくつかの問題が伴うのも事実であり、そのような困難を克服しつつ鋳物作りの楽しみを伝えるための手法が模索されてきました。こういった取り組みの成果の一部は、学術雑誌やWebページに公開されています。いずれも創意に満ちた興味深い内容だと思われます。
ここでは、これから学校や家庭で鋳物作りを行おうとする方々が各自の目的に則した鋳造法を見つける上で参考にできるように、鋳物作り学習に関する情報を整理してみました。(注目すべき実践事例はまだいくつかあります。整理がつき次第、データを追加する予定です。)
| 原 型 | 既成のペンダント(型取りした後で鋳型に文字などの模様を刻み込む) またはペンダント形状に細工した蜜蝋(蜜蝋表面に模様を刻み込む) |
|---|---|
| 鋳 型 | 小麦粉粘土(水で練った食用小麦粉)、アクリル製型枠、でんぷん(離型材) |
| 金属材料 | 低融点合金 (1)実習用: Uアロイ (U70) (2)持ち帰り用: Uアロイ (U100) |
| 溶解方法 | (不明) |
| 作品の形態 | ペンダント、キーホルダー |
| 実施様態 | 富山大学大学公開行事 「夢大学 in TOYAMA」 |
| 出 典 |
二宮英治:『鋳造工学』,73(2001),550-552. |
| 原 型 | 既成のペンダントやキーホルダー、小物など |
|---|---|
| 鋳 型 | 紙粘土に原型を押しつけて反転写する。(上面開放型) (紙粘土はパルプ質の多い軽いものが望ましい) |
| 金属材料 | 低融点合金(Uアロイ U124) |
| 溶解方法 | キャンプ用携帯バーナー、ひしゃく型の小鉄鍋 |
| 作品の形態 | キーホルダー |
| 実施様態 | 小学校6年生の総合的学習の一環として実施。 北海道YFEが協力した。 |
| 出 典 |
(直接見学) |
| 原 型 | オリジナル原型(材質不明) |
|---|---|
| 鋳 型 | (不明) |
| 金属材料 | 低融点合金 |
| 溶解方法 | (不明) |
| 作品の形態 | キーホルダー、ペーパーウェイトなど (樹脂に封入) |
| 実施様態 | 教育実践(中学校技術科の「金属加工」領域) |
| 出 典 |
「生徒作品の紹介(技術科)」 |
| 原 型 | オリジナルの粘土原型 |
|---|---|
| 鋳 型 | シリコーンゴム |
| 金属材料 | 低融点合金(溶融温度約100℃のUアロイ) |
| 溶解方法 | 空き缶製の湯桶、ガスバーナー |
| 作品の形態 | 金印、銅鐸、銅鏡、銅剣、銅銭などの形の鋳物 |
| 実施様態 | 教育実践(中学校2年生) |
| 出 典 |
「鋳造で古代を復元しよう」 |
| 原 型 | (使用しない) |
|---|---|
| 鋳 型 | シリコーンゴム製の型取りシートをカッターで切り抜き、これを木の板で挟んで使用。 |
| 金属材料 | 低融点合金(溶融温度約100℃) |
| 溶解方法 | ガスバーナ(ラボガス)、ガスコンロ、電気コンロ等 |
| 作品の形態 | キーホルダー |
| 実施様態 | 教育実践(中学校) |
| 出 典 |
| 原 型 | (使用しない) |
|---|---|
| 鋳 型 | 2mm厚のコルク板から型の形を切り出し、これをベニヤ板で挟んで使用 |
| 金属材料 | ホワイトメタル(減摩合金) |
| 溶解方法 | カセットコンロと鍋 |
| 作品の形態 | キーホルダーなど |
| 実施様態 | 教育実践 |
| 出 典 |
(1)「2時間でできる簡単鋳造」
(2)「金属加工で生徒のやる気を引き出す」
(3)「親子でチャレンジ!! 溶かして作ろう,合金キーホルダー!」 |
| 原 型 | (使用しない) |
|---|---|
| 鋳 型 | 紙製の鋳型。教材「ペーパー鋳型メタル」(スタンダードメタル商会)を使用する。 |
| 金属材料 | ピューター |
| 溶解方法 | ガスバーナーで約2分。 |
| 作品の形態 | ペーパーナイフ |
| 実施様態 | 教育実践(中学校2年) |
| 出 典 |
「ペーパーナイフをつくろう(2年) − 金属工芸(鋳金実習)−」 |
ペーパーナイフの場合、研磨などの後工程で時間がかかる。ガイダンスおよびフォルムデザインから始めて完成まで2ケ月はかかるとのこと。
| 原 型 | (使用しない) |
|---|---|
| 鋳 型 | 軟質耐火レンガにキャビティの形を彫る (上面開放型) |
| 金属材料 | スズ |
| 溶解方法 | 電気コンロ(?)と鍋 |
| 作品の形態 | メダル |
| 実施様態 | 独立行政法人 物質・材料研究機構 (旧 金属材料技術研究所) 科学技術週間行事 「ピューター・クラフトに挑戦してメダルを作ろう」 |
| 出 典 |
NIMSNOW2001MAY 「科学技術週間行事 開催報告」 |
当サイトの「日曜日のピューター・クラフト」(その1)を参考にしていただいたのかもしれませんね。
| 原 型 | オリジナル原型(ラワン材) |
|---|---|
| 鋳 型 | 石膏型、コンクリート型 (上面開放型) |
| 金属材料 | ローマンピューター |
| 溶解方法 | ガスコンロとるつぼ |
| 作品の形態 | メダル状の鋳物 |
| 実施様態 | 教育実践法の研究(個人) |
| 出 典 |
「金属加工領域教材教具」 |
| 原 型 | オリジナル原型(木材) |
|---|---|
| 鋳 型 | OBBサンド (上面開放型) |
| 金属材料 | ホワイトメタル(減摩合金) |
| 溶解方法 | カセットコンロと鍋 |
| 作品の形態 | メダル状の鋳物 |
| 実施様態 | 教育実践 |
| 出 典 |
「金属加工で生徒のやる気を引き出す」 |
| 原 型 | 予め用意した原型 |
|---|---|
| 鋳 型 | 生砂型 (上面開放型) |
| 金属材料 | ピューター |
| 溶解方法 | 電熱器またはガスコンロ、ホーロー鍋 |
| 作品の形態 | アクセサリー(キーホルダー) |
| 実施様態 |
体験学習「鋳造教室でアクセサリーを作ろう」 (「イーハトーブの科学と技術展」および「'01 北上工業匠際」) |
| 出 典 |
小綿利憲「鋳造を通してのものづくり体験」 |
| 原 型 | オリジナル原型(5cmx5cmx1cmの石膏板を彫刻) |
|---|---|
| 鋳 型 | 生砂型 |
| 金属材料 | ピューター |
| 溶解方法 | 電熱器またはガスコンロ、ホーロー鍋 |
| 作品の形態 | レリーフ状の鋳物(?) |
| 実施様態 | 岩手大学 大学祭の研究室公開 |
| 出 典 |
堀江皓:『鋳造工学』,72(2000),848-849. |
| 原 型 | 発泡スチロール製原型 |
|---|---|
| 鋳 型 | 砂型(炭酸ガスで固化) (上面開放型および合わせ型) |
| 金属材料 | 亜鉛合金 |
| 溶解方法 | (不明) |
| 作品の形態 | オリジナルのベーゴマ |
| 実施様態 |
(1)教育実践 (中学校3年生の技術・家庭科の授業) (2)埼玉県立民俗文化センター 手作り体験教室「ベーゴマづくり」 |
| 出 典 |
(1)「中学校で手作りベーゴマ!―川口市・青木中学校の授業見学」
(2)埼玉県立民俗文化センター「手作り体験教室」ベーゴマ作り |
| 原 型 | 既製のメダル |
|---|---|
| 鋳 型 | 砂型(炭酸ガスで固化)、(上面開放型) |
| 金属材料 | アルミニウム(アルミインゴット+アルミ缶) |
| 溶解方法 | 七輪2個、木炭、コークス、ブロア(送風機) |
| 作品の形態 | メダル状の鋳物 |
| 実施様態 | 教育実践法の研究(個人) |
| 出 典 |
「アルミの鋳造(アルミ缶の再利用)」 |
| 原 型 | (不明) |
|---|---|
| 鋳 型 | 石膏鋳型(?) |
| 金属材料 | アルミニウム(アルミ缶) |
| 溶解方法 | 七輪コークス炉、送風機 |
| 作品の形態 | ペーパーウェイト |
| 実施様態 | 教育実践(総合的な学習の時間 小学校6年2部) |
| 出 典 |
「アルミ缶の鋳造」 |
| 原 型 | 油粘土 |
|---|---|
| 鋳 型 | 石膏鋳型(電子レンジにより最終乾燥) |
| 金属材料 | アルミニウム(アルミ缶) |
| 溶解方法 | 七輪木炭炉、ドライヤーによる送風 |
| 作品の形態 | 小物 |
| 実施様態 | 教育実践(中学校3年) |
| 出 典 |
「環境問題を考慮したものづくり教材の開発」[PDFファイル] |
| 原 型 | 石膏鋳型の直接彫刻 |
|---|---|
| 鋳 型 | 石膏鋳型 |
| 金属材料 | アルミニウム(アルミ缶) |
| 溶解方法 | 七輪木炭炉、ドライヤーによる送風、鉄の灰皿を坩堝に使用 |
| 作品の形態 | キーホルダー |
| 実施様態 | 教育実践(中学校) |
| 出 典 |
技術とものづくり(加工学習)単元指導計画 【単元名】アルミ缶をリサイクルしてオリジナルキーホルダーを作ろう。 (18時間) |
| 原 型 | ペン皿形状の木型(木型屋に発注) |
|---|---|
| 鋳 型 | 生砂型 |
| 金属材料 | Al-Si 合金 |
| 溶解方法 | (不明) |
| 作品の形態 | ペン皿 |
| 実施様態 |
体験学習「鋳造実習・アルミを溶かしてペン皿を作る」 中学生希望者20名 (「第3回いわて・こども・ものづくりセミナー」) |
| 出 典 |
小綿利憲「鋳造を通してのものづくり体験」 |
| 原 型 | 本物の銅鏡 |
|---|---|
| 鋳 型 | (1)OBBサンド (上面開放型) (2)生砂型 (上面開放型) |
| 金属材料 | (1)ホワイトメタル (2)青銅(スズ3に対して銅7程度) |
| 溶解方法 | (1)ガスコンロ、鍋 (2)手作りの耐火煉瓦炉、コークス、掃除機を逆転した送風機 |
| 作品の形態 | 銅鏡のレプリカ |
| 実施様態 | 教育実践の研究サークル活動(トータルで1日) |
| 出 典 |
「銅鏡づくりにチャレンジ」 |
| 原 型 | (使用しない) |
|---|---|
| 鋳 型 | 耐火レンガにキャビティの形を彫る (合わせ型) |
| 金属材料 | 青銅 |
| 溶解方法 | 手製の炉(市販のルンペン・ストーブに耐火モルタルの内張り)、 送風機(小型ブロワー)、木炭とコークス、4〜6号るつぼ |
| 作品の形態 | 銅鏡 |
| 実施様態 | 小学校6年生卒業制作、地元の鋳物工場(鋳工舎)が協力 |
| 出 典 |
佐藤五十雄:『日本鋳物協会北海道支部会報』,No.105(1995),16-17. |
| 原 型 | オリジナルの原型(円盤状の木の型にボール紙を貼って凹凸模様を作る) |
|---|---|
| 鋳 型 | 砂型(炭酸ガスで固化) (上面開放型) |
| 金属材料 | 青銅 |
| 溶解方法 | コークス炉、送風機、6号るつぼ |
| 作品の形態 | 銅鏡 |
| 実施様態 | 岐阜大学教育学部技術教育講座「ものづくり教室」 |
| 出 典 |
「輝け 銅鏡」 |
| 原 型 | 直径7cmのボール紙を切り抜いて銅鏡の裏面の文様をつくり、 それを円盤状の板に木工用ボンドで接着する。 |
|---|---|
| 鋳 型 | 砂型(炭酸ガスで固化) (上面開放型) |
| 金属材料 | 青銅(銅73%、スズ27%) |
| 溶解方法 | レンガを積んで作ったコークス炉、送風機(ブロアー)、るつぼ |
| 作品の形態 | 銅鏡 |
| 実施様態 | 千葉大学教育学部技術科教育実習室で行われた「課外授業」 |
| 出 典 |
課外授業「青銅鏡づくり」 −CO2プロセスによる青銅の鋳造− |
| 原 型 | オリジナル原型(発泡スチロール) |
|---|---|
| 鋳 型 | 乾燥砂 |
| 金属材料 | アルミニウム |
| 溶解方法 | 電気炉 |
| 作品の形態 | |
| 実施様態 | 大阪府立大学工学部オープンカレッジ |
| 出 典 |
「材料工学科 オープンカレッジ 体験実験」 |
| 原 型 | オリジナル原型(発泡スチロール) |
|---|---|
| 鋳 型 | 乾燥砂 |
| 金属材料 | アルミニウム合金 |
| 溶解方法 | 耐火レンガ製コークス炉 |
| 作品の形態 | |
| 実施様態 | 実践研究(材料教育) |
| 出 典 |
「消失模型鋳造法でどこまでできる?」 |
| 原 型 | オリジナル原型(発泡スチロール) |
|---|---|
| 鋳 型 | 生砂型(鋳物砂+ベントナイト+適量の水) |
| 金属材料 | アルミニウム合金(AC3A) |
| 溶解方法 | ドラム缶と耐火煉瓦で自作、鋳型砂を入れる枠には食品の空き缶 |
| 作品の形態 | オブジェ |
| 実施様態 | 実践研究(美術教育) |
| 出 典 |
林剛人丸: 「美術領域における技術習得のための入門的授業の実践 -フルモールド法によるアルミ鋳造を題材として-」, 第2回筑波大学技術職員技術発表会予稿集 (報告書)[PDFファイル] |
| 原 型 | オリジナル原型(発泡スチロール) |
|---|---|
| 鋳 型 | 乾燥砂 |
| 金属材料 | アルミニウムおよびAl-Si合金 |
| 溶解方法 | 電気炉 |
| 作品の形態 | ペーパーウェイト |
| 実施様態 | 学生実験(大学3年生) |
| 出 典 |
大参達也, 松浦清隆, 大笹憲一: 消失模型鋳造をテーマとした学生実験プログラム, 『鋳造工学』, 76:705-709(2004) |
| 原 型 | オリジナルの蝋原型 |
|---|---|
| 鋳 型 | 耐火石膏(エチルシリケートをバインダにするタイプ) ペットボトルを枠代わりにする。プロパンバーナーの加熱で脱蝋。 |
| 金属材料 | スズ |
| 溶解方法 | カセットコンロ、ホーロー鍋 |
| 作品の形態 | アクセサリ |
| 実施様態 | 「Made in くしろ」(地場工業製品展示会)での鋳造体験イベント 参加者25名(小中学生および一般市民)、見学者1500名。 |
| 出 典 |
佐藤五十雄氏(鋳工舎)からの情報および鋳造体験イベントのパンフレット |
| 原 型 | (1)ロストワックスで造ったピューター製小物(動物やアニメもの) (2)ワックスを使い、各自、油粘土のように原型制作 |
|---|---|
| 鋳 型 | (1)油砂(OBBサンド)、木枠 (2)石膏(ロストワックス用、鉄パイプが枠) |
| 金属材料 | ピューター |
| 溶解方法 | ニクロム式電気コンロ、鉄鍋 |
| 作品の形態 | 小物 |
| 実施様態 | 岩手県工業技術センター 一般公開、(1)0.5〜1時間、(2)8時間 |
| 出 典 |
岩手県工業技術センター 鋳造担当 氏からの情報 |
| 原 型 | オリジナルの粘土原型−>シリコーンゴム雌型−>蝋型 |
|---|---|
| 鋳 型 | 石膏 |
| 金属材料 | 亜鉛合金(HAZ) |
| 溶解方法 | 七輪、手製のふいご、8番黒鉛るつぼ |
| 作品の形態 | オブジェ、メダル |
| 実施様態 | 稚内北星学園短期大学1年 ゼミナール(通年) |
| 出 典 |
姫宮利融:『日本鋳造工学会北海道支部会報』,No.118(1999),42-46. |
| 原 型 | オリジナルの蝋原型 |
|---|---|
| 鋳 型 | (1)真土(?) (煉瓦製の窯で焼く) (2)耐火石膏(遠心精密鋳造) (3)真土(?) (煉瓦製の窯で焼く) |
| 金属材料 | (1)スズ合金 (2)銀 (3)青銅 |
| 溶解方法 | (1)鉄鍋、コークス炉(?) (2)バーナー(?) (3)鉄鍋、コークス炉(?) |
| 作品の形態 | (1)壁掛け・スプーン・ペーパーウエイトなど (2)アクセサリー (3)キーホルダー |
| 実施様態 | (1)高岡短期大学大学開放事業(4日間) (2)平成15年度高岡短期大学公開講座(8日間) (3)「ものづくり体験講座」(2日間) |
| 出 典 |
(2)「高岡短期大学 公開講座」 |
富山大学芸術文化学部(旧:高岡短期大学)の公開講座では、毎年、鋳造法を変えているようです。
上記の実践事例において「低融点合金」と呼ばれている合金は、いわゆる易融合金のことです。易融合金は、スズ(錫)より溶融温度の低い合金の総称で、一般に、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)などの低融点金属の二元または、それ以上の多元合金です。
易融合金の中には、例えばウッド合金のように水の沸点より低い温度で溶融するものがあり、鋳造合金として使用する際には、温度的に取り扱いが容易であるという利点があります。また、温水の中で金属が溶融するところを目の当たりにすることで、金属の多様さを学ぶきっかけにもなります。しかし、易融合金の多くは有害な重金属を含んでいるため、取り扱いには注意が必要です。
易融合金に含有される金属のうちで特に毒性が懸念されるのは、カドミウムと鉛です。カドミウムは強い毒性を持っているため、使用が厳しく制限されています。また鉛についても、鉛散弾による鳥獣の中毒や、廃棄された電気機器中のハンダから溶け出る鉛による環境汚染が懸念されており、その使用が規制されることになっています。従来、一般的に使用されてきたハンダはスズ−鉛合金ですが、これが鉛規制により使用できなくなるため、現在、これに替わる「鉛フリーハンダ」が研究されています。
このような観点から見ると、鋳造した易融合金を樹脂に封入する手法(実践事例2-3)は、合金に直接触れないようにできるという点では非常に興味深いアイデアだと思われます。いずれにしても、易融合金を鋳造に使用する際には、少なくともその合金にどのような有害金属が含まれているかをあらかじめ把握しておく必要があると思います。
ちなみに、上記の実践事例でしばしば登場する易融合金「Uアロイ」((株)大阪アサヒメタル工場の製品)のシリーズでは、
(1)カドミウムを含まないもの: U58,U95,U100,U124,U138
(2)鉛を含まないもの: U102.5,U138
(3)カドミウム・鉛共に含まないもの: U138
となっています((株)大阪アサヒメタル工場による情報)。"U138"はおそらくビスマスとスズを主成分にした合金であると思われます。
ピューターやホワイトメタルに含まれているアンチモン(Sb)にも毒性があります。ただ、鉛フリーハンダの一種にSn-5%Sb合金が挙げられているなど、これらのスズ−アンチモン系合金自体は、現在の所、特に有害であるとは考えられていないようです。その理由については良く分かりませんが、スズ−アンチモン合金中のアンチモンが、スズ中の固溶元素ないし金属間化合物Sb2Sn3の形で存在し、易融合金中のカドミウムや鉛のように「生」の形で存在することが無い、という点に関係しているかもしれません。(この分野の専門家ではないため、残念ながらはっきりしたことは言えません。)
身体に有害な金属を含みながら実用上問題なく使用されている合金としては、例えば、ステンレス鋼が挙げられます(クロムやニッケルが多量に含まれています)。スズ−アンチモン合金も、あるいはこれと同様なのかもしれません。
とは言っても、用心するに越したことはないので、例えば、合金の溶解は風通しの良い場所で行うこと(蒸気・ヒュームを吸わないように)、また、研磨時に出る細かい金属粉を吸わないように湿式研磨を採用することなど、十分な注意を払うことが必要だと思います。
個人的には、鋳物作り学習で使用する金属としては、純スズが最適だと考えています。スズは身体には無害ですし、見た目も美しく、軟らかくて加工しやすいという利点があります。ただし融点が約232℃と、水の沸点を大幅に上回っているため、適切な鋳型材料を選択する必要があります。
上記の実践事例で使用されている鋳型材のうちで、スズの鋳造に問題なく使用できるものとしては、以下のものがあります。
このうち比較的使いやすいものは、1〜5まででしょう。水で溶くタイプの石膏やコンクリートの場合は、水分を完全に除くことが重要です。
いずれにしても、学習の対象年齢やテーマ、実施の様態(時間的制約や設備)などに応じて、採用すべき手法も当然変わると思われます。