いもじな日々

−作業記録と雑感−

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2002_07

2002-07-28
続・「きょうだい心中」

 図書館で本を借りる。

  1. 久世光彦 『花迷宮』(平凡社,1991.8.9)
  2. 中上健次 『枯木灘』(河出書房新社,1977.5.27)

 この二冊は、「兄妹心中」ネタ関連。 いくら余裕がないといっても、せめて文献で確認するくらいはしたいので。

 『枯木灘』については、中上健次全集が有るのだが、部屋の段ボール箱を発掘するより、借りた方が手っ取り早いのだ。(^^;

 『花迷宮』のなかで「兄妹心中」を扱っているのは、「聖 しいちゃん」というエッセーだ(p.203-234)。ここでは詳しい内容には触れないが、著者が子供の頃見た〈しいちゃん〉兄妹の想い出を核にして「兄妹心中」の話題を展開している。このなかで文覚の逸話にも触れていて、「もしかしたら...」と思ったのだが、私のような考えは述べられていなかった。

 久世光彦が最初に聞いたのは、先に引用した兄妹相姦に至る兄妹心中(『花迷宮』p.209-210)の方で、その「ヴァリエーション、あるいは元唄らしいもの」として、『枯木灘』で使われた唄を引用している。こちらは、モンテンとオキヨの「西陣町」のバージョンなのだが、山崎ハコの唄の歌詞に細かい描写が付け加わった形になっている。

国は京都の西陣町で 兄は二十一その名はモンテン
妹十九でその名はオキヨ 兄のモンテン妹に惚れて
 
それがつもりて御病気となりて 三度の食事も二度となり
二度の食事も一度となりて 一度の食事も咽喉越しかねる
 
オキヨオキヨと二声三声 呼べばオキヨはハイハイと
これさ母さん何用でござる 兄の見舞いじゃ見舞いにあがれ
 
言われてオキヨは見舞いにあがる あいの唐紙さらりと開けて
三足歩いて一足もどり 両手つかえて頭を下げて
 
これさ兄さま御病気はいかが 医者を呼ぼうか介抱しよか
そこでモンテン申すには 医者もいらなきゃ介抱もいらぬ
 
わしの病気は一夜でなおる 二つ枕に三つぶとん
一夜寝たなら御病気がなおる 一夜たのむぞ妹のオキヨ
 
言われてオキヨは仰天いたし 何を言いやんすこれ兄さまよ
わしとあなたはきょうだいの仲 人に知られりゃ畜生と言わる
 
親に聞かれりゃ殺そと言わる 友だちなんかに恥ずかしござる
あなたに似合いし女房もござる わしに似合いの夫もござる

としは十九で虚無僧なさる 虚無僧殺してくれたなら
一夜二夜でもさん三夜でも 末は女房となりまする
 
言うてオキヨはひとまず下がり 髪を結うたりお化粧したり
親ゆずりの箪笥を開けて 下に着るのは白羽二重よ
 
上に着るのは黒羽二重で 当世はやりの丸つけ帯を
みよにゃまわしてはびこと結び ぽんとたたいて後にまわし
 
当世はやりの糸かけわらじ 二尺あまりの尺八持ちて
深い編笠面体かくし 瀬田の唐橋笛吹いて通る
 
そこでモンテンの目にとまる あれは妹の夫であろう
これを殺せばオキヨはままと 狙いこめたる六発玉を
 
放てばギャーと啼く女の声で どこのどなたかお許しなされ
言うてモンテンそばにと寄りて 編笠とりてよく見れば
 
思いこんだる妹のオキヨ 妹のオキヨにだまされた
ここで死ねばきょうだい心中
 
(『花迷宮』p.220-223)

 『枯木灘』(p.214)では、この最後に
「兄は京都の 西陣町で」 と 「哀れなるかよ きょうだい心中」
という文句が付け加わっている。(文章に組み込まれた形になっているので引用の際に見落としたのだろう。また、悲鳴は「ギャー」ではなく「キャー」だ。)

 ところで、このエッセーには、所々に意味を測りかねる不思議な文章が現れる。著者にとって、〈しいちゃん〉は、本当のところどのような存在だったのか? ...そんなことを考え込ませるような文章なのだが、...あからさまには言えないことなのか? それとも、これ自体が著者の作為的な仕掛けなのか?

2002-07-27
発見!

 シュルレアリストの中にアリスが居る。

2002-07-26
UNICA ZÜRN: "HEXEN TEXTE"

 ガレリア・アミカ刊。ちょうどCDケースくらいのサイズの小さな本だ。ウニカ・チュルンのアナグラム詩の原文と和訳、そして挿絵として彼女のデッサンが載っている。また、ハンス・ベルメールのアナグラムに関する文章が後書きとして収録されている。これの原文は"OBLIQUES"に載っているが、欧文だったんだよな。

−−−

 角川文庫の高橋克彦『偶人館の殺人』購入。前に読んだ『ドールズ』(角川文庫)がそこそこ面白かったので、ちょっと期待。...ところで、『偶人館の殺人』の表紙が吉田良の人形で、『ドールズ』のほうが智内兄助の絵。  なかなかやってくれるじゃないか!

2002-07-25
顔文字採集

 マジネタを書いた後なんで、まったりと。

( ̄ー ̄)   ( ̄▽ ̄;)   ( ̄□ ̄;)!!

 こんな感じで、顔文字やアスキーアートの能力に関しては、日本人が最強だな。
何と言っても、日本人は、(1)表意文字を使い、(2)マンガが大好きで、(3)他人の表情の動きに敏感で、と言った具合に、見事に条件が揃っているからな。

2002-07-21
「きょうだい心中」

 七夕の日の後、「山崎ハコ ベスト コレクション Dear My Songs」を購入して、ずっと聴いている。これまでも「ききょうの花」とか「水割り」とかが好きでよく聴いたものだが、特に熱心なファンというほどではなかった。しかし、今改めて聴いてみると、他にも「望郷」や「白い花」など、心にぴったりくる曲がいくつもある。

 そのなかでも特に気になったのが「きょうだい心中」という曲だ。これは今まで聴いたことがなかった。ちょっと調べてみると、この曲は、1979年公開の映画「地獄」(神代辰巳監督)の挿入歌として発表された。そして、この映画の主題曲「心だけ愛して」(当時の題は、地獄「心だけ愛して」)と併せてシングルレコード『地獄「心だけ愛して」』として発売されている。

 「ベスト コレクション」のライナーノーツには、「作詞:不詳(「江州音頭」より)、作曲:山崎ハコ」とある。ちょっと詞を引用してみよう。

「きょうだい心中」
 
国は京都の 西陣町で
兄は二十一 その名はモンテン
妹十九で その名はオキヨ
兄のモンテン 妹に惚れて
 
これさ兄さま 御病気はいかが
医者を呼ぼうか 介抱しようか
そこでモンテン 申すには
医者も要らなきゃ 介抱もいらぬ
 
わしの病気は 一夜でなおる
二つ枕に 三つぶとん
一夜寝たなら 病気がなおる
一夜頼むぞ 妹のオキヨ
 
言われてオキヨは 仰天いたし
何を言いやんす これ兄さまへ
わしとあなたは 兄妹の仲
人に知られりゃ 畜生と言われる
 
実は私にゃ 男がござる
年は十九で 虚無僧なさる
虚無僧殺して くれたなら
一夜二夜でも さん三夜でも
末は女房と なりまする
 
兄のモンテン 虚無僧殺す
深い編笠 その下に
哀れなるかや 妹のオキヨ
かねて覚悟の 妹のオキヨ
兄のモンテン 妹を殺す
 
思いこんだる 妹のオキヨ
妹のオキヨに だまされた
ここで死ねば きょうだい心中
兄は京都の 西陣町で
哀れなるかよ きょうだい心中
 
(ライナーノーツより引用。一部、誤字訂正。)

 気になったのは、この詞の内容とその成り立ちだ。

 江州音頭とは、もともと、寺の再建を祝って住職や信徒らが経文に節をつけて踊り明かした行事を起源とし、後に「念仏踊り」の要素を取り入れて一般民衆向きの音頭としたものだそうだ。これが近江路一帯に広がって盆踊りとして定着した。それとともに、音頭の演題も本来の経文から変化し、恋物語から軍記まで多種多様になっていったらしい。この盆踊り歌の「兄妹心中」は、中上健次の『枯木灘』にも登場し、重要な象徴的役割を果たしている。

 しかし、「兄妹心中」の歌そのものは、様々な地方に種々のバリエーションが存在する。久世光彦はエッセイ集『花迷宮』で、それらを多数引用しているそうだ。その中には、兄妹が近親相姦に至る内容のバージョンも存在する。

浪華町なら大阪町よ 大阪町なら兄妹心中
兄は十郎で妹はお菊 お菊十八兄さははたち
 
兄の十郎が妹に惚れて いとし恋しの病の床に
ある日お菊が見舞いに見えて これさ兄上病はいかに
 
わしの病はわけある病 医者もいらねば薬もいらぬ
せめてお前のお腹の上に 乗れば病はぴたりと治る
 
お菊兄さのためだとあらば 肌身合わすも死もいとやせぬ
お菊痛かろ兄さはよかろ お菊泣くなら兄さも涙
 
兄と妹じゃ夫婦になれぬ 世間悪いか二人の罪か
雪の降り積む浪華の町に 紅が散る散る兄妹心中
 
  (http://www.orcaland.gr.jp/~morris/nikki/0109dry.htm より引用)

 問題は、ここだ。

 ...以下は私の推測で、特に根拠はない。

 私は、兄妹が近親相姦に至るバージョンが原形であると見る。これが例えば瞽女唄のような形で、少しずつ変化しながら様々な地方に広まっていったのだろう。 そして、ある時、詞の内容に突然変異的な変化が生じる。兄が妹の言に従って心ならずも妹を殺害するという、衝撃的な物語に変化するのだ。或る意味、この変化によって、この歌は古典的な悲劇性を獲得したと言ってよい。

 その変異源となったのが、平家物語に登場する僧・文覚(もんがく)の逸話だ。

 京都御所の警護役を勤めていた武士遠藤盛遠が、人妻・袈裟御前に思いを寄せる。何度断っても言い寄る盛遠に対して、袈裟御前は根負けして、とうとう、彼の思いを受け入れると言う。彼女の夫・源渡の殺害を条件に。...そして、盛遠は、渡の寝込みを襲い斬り殺してしまう。しかし、渡だと思っていた人物は、実は袈裟御前だった。彼女は、夫に成り済まし、盛遠に自らを殺させたのだ。...

 この盛遠が、後の文覚だ。...この物語と「きょうだい心中」との間の相関は一目瞭然だろう。ただ、残念ながら、今はこれ以上この問題を追求する余裕がない。

 ...ところで、彫刻家・荻原守衛の作品に、「文覚」という彫刻がある。この作品に表現されたのは、かなわぬ恋に苦悶する彼自身の姿だった。その相手の名は、相馬黒光。恩人・相馬愛蔵の妻。

 荻原守衛の最後の作品、彼が自らの命と引き替えるようにして造りあげた彫刻「女」は、彼女の面影を宿しているという。

2002-07-07
画期的な鋳型

 冬の間、いろいろ考えて画期的な鋳型を思い付いた...つもりだったのだが、やってみるとなかなか難しい。はたして、公開まで挫折しないでたどり着けるか?

 そういえば、今日は地方によっては七夕祭りなのか。 しかし、今日はずっと雨。

−−−

山崎ハコ

 驚いた。TVアニメの「ちびまる子ちゃん」に山崎ハコが出てた。デビュー前の彼女が登場人物として(しかも本人のアフレコらしい)。さらに歌まで(「ヨコハマ」!)唄っていた。


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2002年7月
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