メタルフィギュア

−小さな鋳物たち−

メタルフィギュア(FM企画)
吟遊詩人(PC15)と術者(PC38)、[FM企画]


メタルフィギュア。金属製の人形(ひとがた)。 その種類は、観賞用の比較的大きなものから、テーブルトークRPG(TRPG)のコマとして使用されるミニチュアモデルまで様々なものがあります。そして、ここで紹介するのは、後者の、一般に25ミリサイズと呼ばれるメタルフィギュアです。

メタルフィギュアとテーブルトークRPG

下に示したメタルフィギュアは、アメリカのReaper Miniatures社の『DARK HEAVEN』シリーズの一つです。この作品はTRPG用としては大きめで、翼の先まで入れると65mm程の高さですが、頭部の大きさは小豆程度にすぎません。そして、驚くことにその小さな顔に目・鼻・口がきちんとモールドされているのです。この顔といい、羽毛の筋が細かく刻まれた翼といい、その緻密な造形には溜息が漏れるほどです。材質はおそらくホワイトメタルだと思われます。(*1)

2190 Angel of Light, Reaper Miniatures, Inc.
2190 Angel of Light, Reaper Miniatures, Inc.

メタルフィギュアの起源は、ヨ−ロッパにおいて軍事戦略の駒や子供の玩具(鉛の兵隊)として使われた金属人形なのだそうです。これが、やがてゲームのコマに使われるようになりました。

では「テーブルトークRPG」とは?
 日本ではRPG(ロール・プレーイング・ゲーム)というと「ドラクエ」などのコンピュータRPGを思い浮かべる人が大多数でしょうが、テーブルトークRPGは、言うなればその原形となったものです。

TRPGでは、各プレーヤーが、ゲームマスター(進行役)により用意された空想世界の中でそれぞれ一人のキャラクター(登場人物)を演じます。そこでは、メタルフィギュアはプレーヤーの分身です。そして、プレーヤー達はゲームマスターとともにテーブルを囲み、キャラクターとして会話を交わしながらゲームを進めていくのです。

TRPGの世界は「ファンタジー」すなわち「剣と魔法の世界」が多いため、メタルフィギュアのキャラクターも、その関係で"剣士"や"魔法使い"、"オーク"など多くの種類があるようです。(ちょっと変わったものでは「クトゥルフ」の怪物のセットがオークションに出品されているのを見かけたことがあります。)

日本的メタルフィギュア

さて、いよいよ「表紙」の画像に登場してもらったメタルフィギュア達の話をすることにしましょう。彼女らは、日本のTRPG用メタルフィギュアのメーカーであるFM企画の作品です。これらのフィギュアの特徴は、大胆にデフォルメされた等身、そして一種記号化された顔の造形である「アニメ顔」という日本的なアニメ・キャラクター特有のデザインを備えているということでしょう。これらのフィギュアの作者は、欧米の伝統工芸品であるメタルフィギュアに、日本独自のアニメ的表現を持ち込んでみせたのです。

先に紹介したREAPER社の(なかでもSandra Garrity作の)フィギュアは上品な造型が特徴で、特に女性キャラクターの美しさは一番だとされていますが、顔の造形に関しては、多少いかつい感じを受けます。これに対して、FM企画のフィギュアは違和感無くかわいらしいと感じます。

このようなキャラクターの表現は、欧米と日本との美意識の違いが端的に現れている領域と言えるのかもしれません。以前、ある雑誌(CG iCupid, vol.02, Oct.,2000)で、「トゥームレイダー」の主人公ララ・クロフトと「機動戦艦ナデシコ」のホシノ・ルリが見開きの左右に並んでいるのを見掛け、両者のあまりの相違に改めて驚いたことがあります。欧米では大人気のララが日本ではそれほど人気が出ないのは、そのような美意識の相違が決定的な要因となっているものと考えられます。

「アニメ顔」に見られる大胆なデフォルメと記号化されたデザイン(*2)。日本のマンガ・アニメのなかで高度の発展を遂げたこの表現様式こそ、浮世絵、そしてさらにそれ以前に遡ることのできる日本的美意識の正統な後継なのでしょう。

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てゆーか、やっぱ、かわいいものは理屈抜きでかわいいよね。<−これが本音(笑)

リンク

FM企画バナー
FM企画のページ。「日曜鋳物師のページ」リンクでも紹介しています。

REAPER
Reaper Miniatures社のページ。同社のメタルフィギュアが数多く紹介されています。


(*1)メタルフィギュアの材質
以前は、メタルフィギュアといえばもっぱらホワイトメタル製だったようです。しかし最近は、鉛の規制の関係でピューター製に移行しつつあるようです。
 また、鋳造法としては、ほとんどのメーカーが「遠心鋳造法」を採用しているそうです。遠心鋳造法は、溶けた金属に遠心力を作用させて鋳型内に充填する方法で、これにより鋳型の微細な凹凸も転写することができます。

(*2)デフォルメ・キャラクター
思うに、アメリカ生まれのBetty Boop(ベティーちゃん)こそが、最初に「アニメ顔」に近い地点まで到達したアニメ・キャラクターではないでしょうか? ベティーの顔のデザインは、まるで現在の日本における「プニ」の出現を予告しているかのようです。日本には、ベティー・ファンが数多くいますが、このことも日本的美意識との親和性といった観点から説明できるように思われます。それにしても、私にとってとりわけ興味深いのは、アメリカのマンガ・アニメの歴史のなかでベティーのようなデザインが生まれながら、それがキャラクターの個性の領域にとどまり、一つの様式として確立されることがなかったということです。
...ところで、最近、ベティーによく似た「ブライス(Blythe)」という頭でっかちな人形がリバイバルしつつあるようです。
(参考: http://www.chroniclebooks.com/thisisblythe.html、 http://kanazawa.cool.ne.jp/chronicles/)
この人形は、アメリカで1972年の1年間だけ製造されたものだそうです。(ターゲットとしたアメリカの子供にはウケなかったらしい)


2000年12月9日更新 (2000年10月21日公開)
日曜鋳物師のページ