鋳物用語解説

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鋳放し(いばなし)

鋳型から取り出して、湯口や押湯などを除去し終わった状態の鋳物。

易融合金(いゆうごうきん)

可融合金(fusible alloys)とも呼ぶ。一般に、純スズの融点(約232℃)より低い温度で溶ける合金を総称する。

共晶組成の易融合金
Bi(%)Pb(%)Sn(%)Cd(%)その他(%)溶融温度(℃)共晶相
-38.161.9--183(Pb)+(Sn)
〜60--〜40-146(Bi)+(Cd)
43-57--139(Bi)+(Sn)
56.00-40.00-Zn 4.00130 
44.855.2---125.5(Bi)+ε
53.90-25.9020.20-100(Bi,Sb)+(Cd)+CdSb
52.0032.0016.00--95(Bi)+(Pb)+(Sn) or (Bi)+Bi3Pb7+(Sn)
51.6540.20-8.15-92(Bi)+(Cd)+(Pb) or (Bi)+Bi3Pb7+(Cd)
57.50-17.30-In 25.2079 
50.0026.7013.3010.00-70 
49.4018.0011.60-In 21.0058 
44.7022.608.305.30In 19.1044 
Binary Alloy Phase Diagrams (2nd. Ed.), Ed. by T. B. Massalski, (ASM International, 1990)
Handbook of Ternary Alloy Phase Diagrams, Ed. by P. Villars, A. Prince and H. Okamoto, (ASM International, 1995)
日本金属学会編:金属便覧 改訂6版 ,(丸善, 2000), p.600.

ビスマス基の易融合金
Bi(%)Pb(%)Sn(%)Cd(%)その他(%)溶融温度(℃)名称
48.028.514.5-Sb 9.0103〜227セロマトリックス
46.119.734.2--96〜123マロット合金
502822--96〜110ローズ合金
503020--96〜100オニオン合金
502525--96〜98ダルセ合金
5031.2518.75--96〜97ニュートン合金
404011.58.5-70〜90セロセーフ
50271310-70〜73リポウィツ合金
50241412-70〜72ウッド合金
48.025.6312.779.6In 4.061〜65セロロー147
42.921.707.975.09In 18.33, Hg 4.0038〜43セロロー105
日本金属学会編:金属便覧 改訂6版 ,(丸善, 2000), p.601.

鋳枠(いわく)

砂型の周囲を保持する枠(鋳型枠、型枠、あるいは枠とも呼ぶ)。金属製または木製。

内引け(うちびけ)

鋳物の内部に閉じこめられた状態で生じたひけ巣。(参照:ひけ巣、外引け)

おしゃか

不良品。阿弥陀如来像を鋳造しようとしたのに、湯回り不良によって光背の無い釈迦如来像になってしまったという鋳物師内での冗談話に由来するとされている。(参照:湯回り)

押湯(おしゆ)

鋳型に鋳込まれた溶湯が固まるときの体積収縮分の溶湯を補給するために鋳物部に取り付けられる付属物。(参照:凝固収縮)

気泡巣(きほうそう)

鋳込み中に、空気、鋳型から発生するガス、溶湯から放出されるガスなどを巻き込んで生じたもの。

凝固収縮(ぎょうこしゅうしゅく)

ほとんどの金属は、液体から固体に変わるときに体積が減少する。これを凝固収縮という。

凝固収縮率
金属凝固収縮率(%)
スズ(Sn)2.6
アンチモン(Sb)0.94
アルミニウム(Al)6.6
鉄(Fe)〜4.4

合金(ごうきん)

例えば「純金」のように、一種類の金属元素からできている金属を純金属と呼びます。これに対して、二種類以上の元素からできている金属を合金と呼びます。例えば、「18金」というのは、金を重さにして75%含んだ合金のことです(「24金」が純金です)。「〜金」という表し方では残りの25%がどんな金属かは判りませんが、実は残りの金属の種類によって同じ「18金」でもかなり違ってきます。
 ところで、18金の残りの25%が全部銅だった場合、この18金の中の金と銅の原子の数の比は、だいたい1:1になってしまいます。このことを知った時には、「それって、本当に金と言っちゃって良いの???」と思ったものです。
 ただ、合金にするには、それなりの訳があります。例えば、万年筆のペン先には純金では軟らかすぎるので、別の金属を混ぜて硬くした18金がよく使われます。合金は純金属とは異なる様々な新しい有用な性質を持つようになります。だから、日常で使う金属の多くは、実は合金なのです。

砂型(すながた)

鋳物砂で造った鋳型。

外引け(そとびけ)

鋳物の外部に開放された状態のひけ巣。(参照:ひけ巣、内引け)

ダボ穴(だぼあな)

原型(模型)や鋳型を分割する際に、きちんと所定の位置にはまるように、突起部と穴を付ける。前者をダボ、後者をダボ穴と言う。

タルク

滑石。ゴム型への鋳造の際、離型剤として、あるいは型表面の保護や湯流れの促進用にゴム型に塗布する(らしい)。あちゃ〜、知らんかった!・・・失礼(コホン)。

生型(なまがた)

水分を含んだ鋳物砂(生型砂)で造られた鋳型。生型砂は、けい砂、粘結材(粘土など)、添加剤(炭素系添加剤など)を配合してつくられる。

ひけ

溶けた金属が固まって、室温まで冷却するまでの間の体積の減少。液体状態での収縮、凝固収縮、固体状態での収縮の総計。

ひけ巣(ひけす)

鋳物の表面または内部に生じる粗い内壁を持った空洞状の欠陥。主として溶湯の凝固収縮により生じる。(参照:凝固収縮、内引け、外引け)

ふくれ肌(ふくれはだ)

鋳物の表面や表面直下にできる気泡巣。

ホワイトメタル

鉛、またはスズを主成分とする軸受け合金。メタルフィギュアの材料としても使われる。

湯(ゆ)

溶けた金属。溶湯(ようとう)。

湯口(ゆぐち)

鋳型のなかで溶湯(溶けた金属)が最初に通る部分。

湯回り(ゆまわり)

溶湯(溶けた金属)が鋳型内に行き渡ること。

溶融温度(ようゆうおんど)

金属が溶ける温度。金属が純金属の場合は、特に「融点」と言う。

金属が溶ける温度(融点)
金属融点(℃)
スズ(Sn)231.9
鉛(Pb)327.4
亜鉛(Zn)419.5
アンチモン(Sb)630.5
アルミニウム(Al)660.2
銀(Ag)960.5
金(Au)1063
銅(Cu)1083
鉄(Fe)1539
鋳物便覧(改訂4版)
[(社)日本鋳物協会編,丸善,(1986),p.2.]
鉄は最新のデータに訂正

例えば、いま普通に使われているハンダはスズと鉛の合金ですが、ハンダが溶ける温度はこれらの金属よりも低くなります(180℃くらい)。しかし、もっとすごいものがあります。 易融合金(いゆうごうきん)の一種のウッド合金が溶ける温度は約70℃。なんと、お湯の中で溶けてしまいます。この性質を利用して、火災時にはたらくスプリンクラーに使われます。使い方は簡単。水道管の口にウッド合金で栓をすればOKです。火災の熱でウッド合金が溶けたら、水道管から水のシャワーが噴き出します。 (参照:合金、易融合金)


(注) この用語解説は、日本鋳造工学会編 「図解 鋳造用語辞典」 (日刊工業新聞社 1995年)等を参考にしておおみがまとめたものです。私の理解に誤りがありましたら御指摘いただければ幸いです。


2001年10月9日更新
鋳物(いもの)ってなに?
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