ホームに戻る

教文部ニュース第十六号

1999.5.15発行
東北大学職員組合教文部 発行
Tel:022-227-8888 Fax:227-0671
 E-mail:ma53625s@ma5.seikyou.ne.jp


大学審答申法制化学習会

「学校教育法等の一部改正案」がいかに国立大学の自主的改革に逆行しているか?

日時:4月28日(水) 18:00〜20:30
場所:東北大学金属研究所・本多記念館3階・視聴覚室
主催:東北大学職員組合

☆報告:学校教育法等一部改正案の内容とそのねらい
    田嶋玄一(本部執行委員会教文部)

☆コメント,討論


 東北大学職員組合執行委員会は,4月1日付けで「声明」を発表し,この「法案」の定める「運営諮問会議」の設置や,教授会審議事項の限定が,大学の自主的改革の方向と逆行していること,学問の自由を制度的に保証する自治を根本的に破壊するものであること,さらには独立行政法人化への地ならしであることなどを指摘しました。
 しかし,大学の運営や教育研究に大きな影響を与えるであろうこの「法案」については,学内ではほとんど議論されず,私たち教職員がほとんど知らないうちに制定されようとしています。
 そこで,この「法案」がどのような内容のものであるのか?この「法案」によって大学はどのように変革されていくのか?を学習し,今後の民主的,自主的な大学の発展方策を議論しました。その内容を報告します。


☆報告
「学校教育法等の一部を改正する法律案」についての論点整理メモ

田嶋玄一(東北大学職員組合教文部)

以下は全大教作成の討議資料“「学校教育法等の一部を改正する法律案」に関する論点”をもとに,東京私大教連作成のQ&A,およびその後の国会審議によって明らかになった事項を盛り込んだものである.

「改正」されようとしている点を整理すると…

☆優秀な成績の学生は3年間で卒業を (「学校教育法」第55条の3)

☆国立大学に運営諮問会議を置く (「国立学校設置法」第7条の2)

☆学長,評議会の権限強化と教授会の権限の制限


審議状況
10月26日:大学審議会答申.
3月9日:閣議決定.
4月1日:衆議院本会議で趣旨説明,文教委員会に付託.
4月14日:文教委員会審議,7時間.
4月16日:文教委員会参考人質疑.中島峯雄東京外語大学学長,立川涼高知大学学長,梶尾叡一京都ノートルダム女子大学学長,浜林正夫一橋大学名誉教授.各15分の陳述ののち質疑.
4月22日:文教委員会審議,2時間.採決.賛成多数で可決.
5月7日:参議院本会議趣旨説明,文教科学委員会に付託.
5月13日:参議院文教科学委員会質疑,18日参考人質疑,6月20日にも委員会採決か.


(1)学校教育法の改正関係

《3年以上4年未満在学での学部卒業》

◎第55条の3:在学期間の特例として3年以上4年未満の在学で学部を卒業することを可能に.
#この条項を法案の最初にもってきたこと自体が,マスコミ報道を“ミスリード”しようとする意図的なものではないか.事実,新聞報道では,学生にしっかりした学力を身につけさせるものだとして「大学3年で卒業可能に」(日経)「成績優秀な学生は3年で大学卒業も」(読売)のような見出しが多く見られた.

[問題点]
(1)「卒業の要件として当該大学の定める単位」
・カリキュラムは4年間で組み立てている.この自己否定になりかねない.
(2)「優秀な成績で修得したと認める場合」
・1年間にとれる単位数を規制すること及び単位制の厳格な実施との関係‥‥修得できない.
(3)理工系学部だけでなく他の学部への影響・私立大学への影響‥‥大学教育を歪める危険性は?
・卒論などがない学部では3年で卒業させやすいということはないか?
・一部の大学・学部でこれを広げてゆく方向をとった場合に大学教育自体が混乱しないか?
・これを売り物にした私立大学が生まれる懸念は?
・この条項では乱用への歯止めがないのではないか? 省令や行政指導で行うとすれば,文部省の恣意性を広げることになり,問題が残る.
・学生に無用な「競争」をあおることにならないか?
(4)4年を超える学部は「3年以上で文部大臣の定める期間」とあるが具体的に何年か?

[国会審議]
◇優れたとは何か,あいまいだ.「3年卒業」を大学にまかせておかずに踏み込んだ指導をしてほしい.(自民:栗本慎一郎)
◆厳格な評価によって行う.(文相)
◆「3年卒業」大学院の弾力化については私大にも適用性がある.国立大学の組織運営の改善は,設置者としての国がやる.私大は設置者である学校法人がそれぞれ判断することだ(民主:山元勉←→文相)
◆(「3年卒業」が私大の経営上の目玉として適用されると困るが,これを担保するものは?)各大学の基準の公表を促すとともに十分な指導を行う.(山元←→文相)

《学部長設置の法定》
◎第58条:大学の学部長の設置と「学部長は校務をつかさどる」ことを規定

[問題点]学部長設置の法定が教授会権限の縮小に結び付く可能性は否定できない.後述するように,国立学校設置法改正案第7条の6が規定する省令で,教授会議事の手続き等において,学部長権限を強化するような内容が盛り込まれたり,教員選考における学部長の「意見」(教育公務員特例法改正案第4条第6項)が,法的にその権限が裏付けられることで,単なる「意見」ではなくなる可能性があるからである.
 この学部長の法定について,文部省は全大教に対する法案の説明のなかで,「学部長は現在,教特法のなかで,その存在が予定されているが職務内容が定められていない.今回の改正案では学校教育法で位置づけた」と述べている.

《研究科以外の教育研究上の基本となる組織》
◎第66条:当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては,文部大臣の定めるところにより,研究科以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる.

[問題点]アメリカのロースクールのような実業的大学院(高度職業人育成)を念頭に置いているとも言われるが,具体的内容が不明.文部省の説明では,筑波大学の学群,学系のような例が考えられるとしている.

(2)国立学校設置法の改正関係

《運営諮問会議設置の法定》

◎第7条の2(運営諮問会議):国立大学に対して運営諮問会議の設置を義務化

#大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革方策について(1998年10月26日)(以下,「答申」)で,「大学運営協議会」(仮称)となっていたものが「運営諮問会議」という名称に変更された経緯は,文部省によれば「大学運営協議会(仮称)」という名称はふさわしくないという議論に配慮した.」とされる.当該機関は諮問機関という性格である.設置の趣旨は国立大学への財政投入からくるアカウンタビリティー」ということである.

[問題点]
  (1)「国立大学に,運営諮問会議を置く」とは,各大学の判断に委ねるということではなく,設置が義務づけられると理解しうる.
(2)運営諮問会議の委員の選考基準,任期,権限等については,法文上あいまいであるが,学外者だけで構成されること,「学長の申出」のみで,評議会・教授会が選任に関与しないことから,委員の選任の面だけでも大学の自治を侵害する恐れがある.同条第2項の「学長の申し出を受けて文部大臣が任命する」の「申し出を受けて」という文言には注意を要する.というのは,法案の中で「申し出を受けて」と「申し出に基いて」という表現が,微妙に使い分けられているからである.「基づいて」の場合,文部大臣は申し出を受けたら,基本的にそれを追認し任命行為をしなければならないのに対して,「受けて」の場合は行政の裁量の余地が大とみなしうる.この点について,文部省は「学長の申し出が尊重される.『基づいて』より『受けて』の方が若干,柔らかな表現ともいえる」と説明している.
(3)審議事項は「大学の教育研究上の目的を達成するための基本的な計画に関する重要事項」「大学の教育研究活動等の状況について当該大学が行う評価に関する重要事項」「その他大学の運営に関する重要事項」ときわめて包括的,すべての重要事項を扱えるフリ−ハンドの内容となっている.教育と研究,その自己評価,それらを英知を結集して進めていくための大学運営に関することは,大学自身が充分に議論を尽くして自主的に決めるべきものであり,「勧告」という強い権限を持つ「学外者の組織」の審議事項とすること自体,「大学の自治」との関係で重大な疑義を持たざるをえない.
(4)同条第3項の「助言・勧告」は,委員が文部大臣任命であることと考えあわせると相当強い権限を持つとみなしうる.また,「学長の諮問に応じて審議し,及び学長に対して助言又は勧告を行うことができる」という表現(「審議し」の後でいったん切れる)は,運営諮問会議は,学長から諮問されないことについても助言・勧告ができるともとれる(この点について,文部省は「諮問されたこと以外でも勧告できる」).

[国会審議]
◇運営諮問会議は賛成だが一体何か? 教授会とのかかわりはどうなるのか.もっとはっきりと大学改革につながるように位置づけるべきだ.(栗本)
【以下は民主党の山元議員の質問に高等教育局長が答弁】
◆(運営諮問会議の委員はなぜ文部大臣の任命なのかの質問に対して)委員は国家公務員であり,その長が任命することになっている.学長の申し出があった場合,基本的に任命する.文部大臣が拒否したり,再検討したりすることは原則として考えられない.
◆学長への勧告に法的拘束力はない.但し,運営諮問会議が設置された趣旨に鑑みれば学長としてはその尊重が求められる.
◆(評議会と運営諮問会議の意見が違う場合は)評議会は大学全体,運営諮問会議は大所高所を審議する.学長は大学の責任者,評議会の審議をふまえつつ大学の意志決定を学長が行うことが大事だ.
◆(運営諮問会議の若干名とは何人くらいか?)筑波大学の参与会は10名以内.この程度であろう.

《評議会設置の法定》
#従来から教授会については,学校教育法第59条,評議会その他の大学管理機関については,教育公務員特例法において規定されている.しかし,教育公務員特例法上の大学管理機関に関する規定は,あくまでも暫定的なものであり,今回の改正案は,この暫定的であった評議会の設置を法定するものである.
◎第7条の3(評議会):評議会設置の法定,評議員の構成と審議事項の法定

[問題点]
  (1)同条第3項2号の「評議会の議に基づいて学長が指名する教員」というのは,「答申」で提起された「運営会議(仮称)」(副学長,学長の指名する教員,事務局長等で構成)を意識した規定とも思われるが,「運営会議(仮称)」そのものは法定されていない.(この点について,文部省は「『運営会議』はあくまでも学長補佐体制の例示であって,法律には盛り込んでいない.各大学でそのようなものをつくるのであれば認める」と説明している.)学長指名の教員の比率については規定はなく,これを意図的に高めることも可能であり,学長が専断的運営を行うことへの歯止めが失われている.(なお,大学によっては,すでに評議会に学部選出の評議員以外に学長が指名する教員を加える場合もみられる.それが教授会・評議会の議を経るなど,民主的な合意の手続きによるものであれば,単純に学長権限強化の一環とみなすことはできないだろう.これからますます大学運営において様々の専門知識が必要になることを考えれば,必要とされる専門分野の教員が評議会構成員となることが,望ましい場合もありうると思われる.)
(2)同条第5項で評議会の審議事項を列記しているが,その5号で「教員人事の方針に関する事項」を規定している(後述する改正案の教授会の審議事項では,この規定が抜けている).学部教授会の人事は,この評議会で定められた「全学的な」人事方針に縛られることになる可能性がある.
(3)学長を評議会の議長と定めているが,これは,合議による議決機関と執行機関とによる運営という,民主的な(かつ常識的な)運営方法とは全く相容れない.評議会は意思決定機関とは位置付けられておらず,学長がすべての意思決定と執行に携わるという,きわめて非民主的な運営を行わせるものとなっている.議会ではなく重役会議.

[国会審議]
【山元議員(民主党)の質問に対し】
◆評議会の審議事項は全学的レベルの問題を扱う.大学が一つの有機的組織体として全学的視点に立った幅広い審議ができるよう評議会を法的に明確にした(文相)
◆(評議会と運営諮問会議の意見が違う場合は)評議会は大学全体,運営諮問会議は大所高所を審議する.学長は大学の責任者,評議会の審議をふまえつつ大学の意志決定を学長が行うことが大事だ.
◆(評議会は意思決定機関かどうか)現在の評議会は全学の審議機関であり,意思決定機関とは考えていない.意思決定は学長がもつことになる.(上記2つとも佐々木高等教育局長が答弁)
【以下は石井郁子議員(日本共産党)の質問とそれへの答弁】
◇法案には評議会のメンバーとして新たに学長指名の教員枠を設けたが,これまでの評議会の構成は認められないのか.
◆同一メンバーで組織されることは考えにくい.
(この答弁に対して石井氏は「大学の判断でそのまま移行することもありうるのではないか」と重ねて追求した結果,「大学の判断で同一の構成となることもある」と答弁修正.(高等教育局長)
◇現行の評議会が学部内の重要事項を審議し,大学の意思を決定している慣行を認めるのかどうか.
◆現行の評議会は全学の審議機関であり,意思決定機関であるとは考えていない.意思決定権は学長がもつことになる.評議会が意思決定機関になると,評議会の決定が学長を拘束し,学長がみずからの判断と責任において行為できなくなる.教授会も審議機関であり意思決定機関ではない.学校教育法第59条の教授会条項も同じ趣旨だ.(高等教育局長)
◆評議会は重要事項を審議する以上,そこで決まったことを尊重するのは当然だが,最終的な責任は学長が持たざるをえない.

《審議事項の法定と教授会権限の縮小》
#第7条の3(評議会)と対比すると,評議会は全学的運営事項を審議し,教授会は学部の教育研究を中心とする事項を審議するよう規定されている.すなわち,教授会と評議会の機能分担が明確化され,教授会の権限が相対的に縮小しているとみなすことができる.
◎第7条の4(教授会):審議事項の法定と教授会権限の縮小:評議会・教授会の機能分担の明確化

[問題点]
  (1)学部教授会の審議事項では,評議会の審議事項にある「教員人事の方針に関する事項」が明記されていない.文部省は,この点について「人事については,人事の方針に関する基準的なものは評議会で定める.しかし,教特法にあるように,教員『選考』は従来通り『教授会の議に基づき学長が行う.』もの」と説明している.
 教育公務員特例法の改正が,後述するように基本的に現状追認の改正となっていることからすれば,教員選考等の人事権が剥奪されたとはみなせない(教特法改正案第4条5項:「教員の採用及び昇任のための選考は,評議会の議に基づき学長の定める基準により,教授会の議に基づき学長が行う」).
 ただし,前述したように,人事に関する全学的基準に縛られる可能性はある(このことと関連して教特法の改正案では,後述するように,学部長等の教授会が置かれる組織の長が,「当該大学の教員人事の方針を踏まえ,その選考に関し,教授会に対して意見を述べることができる」と規定されている).
(2)仮に評議会が決めるとしても,教授会で議論しなくて良いということにはならない.大学改革,教育・研究の創造は全学的な合意に基づかなければ押し進めることができない課題である.そのためにも全学的な重要事項を教授会においても審議することが重要である.
(3)評議会と同じく,学部長を教授会の議長と定めている.現在も,教授会の議長を学部長がつとめる例は多くみられるが,本来の議事手続きからみると,むしろこれを是正すべきであろう.

[国会審議]
◆(学部教授会権限は日本だけが異常に強いが?)教授会の審議は尊重し,最終的には学長が決定する.(栗本←→文相)
◆評議会は大学全体の重要事項を扱う.学部における教授会の役割は変わらない.しかし,ややもすると学部にかかわりがないことまで審議をしているとの指摘があったので,法律上区分した.(山元←→高等教育局長)
◇教授会も各単位の最高意志決定機関もそうでなくなるのか.意思決定権は学部長がもつのか.(石井郁子:日本共産党)
◆学部教授会は,学部の教育研究に関する審議機関.学部の教育研究について最終的な責任を負うのは学部長.(高等教育局長)
◇最終的な責任を負うということではなく,学部の意思決定権はどこがもつのかを聞いている.学部としての意思決定権は学部長がもつことになるのか.
◆そういうことになる.
◇大学の自治として築かれてきた学部の自治,教授会自治を取り崩すもの.教授会も審議事項が3項目に絞られている.評議会は全学的な問題,教授会は学部の問題となっているが,実態は教授会も全学的な問題も審議している.これまでの審議事項を変更するものなのか,この規定をこえて審議した場合,法律違反になるのか.
◆教授会の審議事項を具体的に列挙していることをふまえれば,前の2項に準ずる教授会が審議することが適切な学部の重要事項と解するのが適当.このような主旨に即して各大学で適切な審議事項を設定してほしい.
◇学校教育法59条にもとづいて,これまでも各大学が慣行して審議している.それが設置法違反とういうことになる.これは矛盾する.いままでの大学自治を堀崩す,大学自治を崩壊させるもの.こういう法案を提出すること自体が大学自治を崩すもの.

《議事手続き等に必要な事項の省令への委任》
◎第7条の6(議事手続き等):運営諮問会議,評議会,教授会の議事手続き等に必要な事項を省令に委任

[問題点]
運営諮問会議,評議会,教授会等の「議事手続き」を省令で定めることを規定しているが,このような重要な事項を行政の裁量に委ねることは,大学の管理運営への行政の介入につながりかねない.また「議事の手続き」以外に,わざわざ「その他これらの組織に関し必要な事項」を規定している点は,行政の裁量によって,省令が規定する事項の範囲をいくらでも広げることが可能なことを含意している.

[国会審議]
◆多数決によって決することを定めるために議事手続きが必要だ.(日本共産党の石井郁子議員に対する局長答弁)
◆評議員に関しては,文部省令で定める項目は評議委員の任期(非常勤),評議員の任期(非常勤),定足数などを考えている.教授会については,定足数,議事手続きなどを考えている.(民主党の山元勉議員に対する局長答弁)

《組織の一体的運営》
◎第7条の7(国立大学等の運営の基準):国立大学等の運営の基準として,「組織の一体的運営」「機能の総合的発揮」を規定
[問題点]
わざわざ法的に規定する必要のないような条項であるが,学部自治の縮小と効率的な大学運営,「改革」の誘導ともとれる.これは訓示規定のようであるが,運営諮問会議の勧告等や「第三者評価機関」の評価等によって,実質的に「効力」を有する可能性がある.また,「一体的運営」の名のもとに,評議会の定める「全学的方針」のもとで,学部固有の特性を軽視するかたちで,大学全体が特定の方向に「誘導」(例えば「大学院重点化」)されていく可能性も否定できない.

《教育研究等の状況の公表》
◎第7条の8(教育研究等の状況の公表):教育研究等の状況の公表を義務化
[問題点]
教育研究等の状況について第三者評価機関の設置を前提に,「公表」を義務づけることは,大学の「自由な気風」を損なうことにもなりかねず問題である.学問には中長期的視野が必要なのにもかかわらず,公表の義務化によって,「短期的業績主義」がはびこる可能性もある(例えば,研究業績等が論文の本数などのように数値化され,それが大学の「パフォーマンス(業績)」とみなされることで).また「公表」を通じて,個人の教育研究内容や議事運営の細部にまで「外部」からの介入が及ぶ可能性もあり,「自治」の枠組との整合性においても問題である.公表の範囲は「教育及び研究並びに組織及び運営の状況」と幅広く規定されているが,どの範囲まで公表するのかについては省令による.
 この省令の骨格が18日までに明らかになった.具体的な公開内容は,1.大学の将来計画や自己点検評価の結果 2.大学の入学や社会人 に対する特別選抜,公開講座などの学習機会 3.成績評価の方針や基準 4.卒業生の進路  5.財務状況−が対象となる方向である.公開方法は,刊行物など広く周知ができる方法にすることとし,インターネットのホームペ ージを含めることを検討している.私立大学についても,大学設置基準の中に,財務状況以外 の情報公開を進める規定を盛り込むことを検討している(読売新聞4月19日).
なお,「公表」そのものは否定すべきものではない.むしろ社会的存在であり社会的責任を有する大学は,大学が果たす機能を社会に向けて積極的に発信すべきである.しかし,それはあくまでも学内の合意の手続きを踏まえて主体的自律的に行われるべきものであり,法によって一律に強制すべきものではない.

[国会審議]
◇戦後,進歩的文化人はソ連や北朝鮮賛美,安保は危険だ,そして今ではガイドラインは戦争法案といったり,テレビ朝日のダイオキシンなどの環境問題など,いつもミスリードしてきた.このよって立つ権威は大学にある.研究の公表が重要だ.こうした無責任な研究は是正されるのか?(自民:栗原裕康←→これに対する直接的な答弁はなし)

(3)教育公務員特例法の改正関係

《教育公務員特例法上の「大学管理機関」を法定》

◎第4〜12条:暫定規定(読替規定)である教特法上の「大学管理機関」を法定

[解説] 現行法第25条の大学管理機関に関する「読み替え規定(暫定規定)」をそのまま法定し,附則から本則に移している.すなわち,現行法の「大学管理機関」という名称が消え,教員人事(採用・昇任・転任・降任・免職・休職等)にかかわる機関が具体的に本則において規定されている.

《学長選考を評議会に》
◎第4条第2項:学長の選考を「大学管理機関(評議会の議に基づき学長と読替)の定める基準により」から,「評議会の議に基づき学長の定める基準により,評議会が」と規定.

[問題点]
評議会を「選出基準(方法)を定める機関」から,「選出を行う機関」へと変えている.従来行われているような全学の教官による投票などは否定される可能性がある.

《選考における学部長の意見》
◎第4条第6項:学部長が選考において,教授会に対して意見を述べることができる旨を規定

[問題点]
採用及び昇任の方法について定めた第4条は,「大学管理機関」を具体的に規定したのみならず,その第6項において,教授会が置かれる組織の長,すなわち,学部長等が,当該大学の人事の方針を踏まえ,その選考に関し教授会に対して「意見を述べることができる」権限をわざわざ法定している.前述したように,学校教育法上の学部長の法定と考えあわせると,「意見を述べることができる」権限を法定したことは,学部長の「意見」が,単なる「意見」ではなくなる可能性がある.

[国会審議]
【以下は藤村修議員(民主)の質問と答弁】
◇教員人事の基準(「評議会の議に基づき学長の定める基準により,教授会の議に基づき学長が行う」の基準を指す)と方針(評議会の審議事項)の違いと関係は?
◆「基準」は教員選考にあたってすべて満たすことが求められる.「方針」はそれを完全に満たすことを要求されるものではない.例えば外国人教員,女性教員,他大学教員を採用するなどの方針に対して言うことができる.学部長が教授会の一構成員としてではなく学部長として意見を述べることを法的に明確にし,学部長の教員人事の立場をはっきりさせた.学部長の意見が具体的に反映されることを期待したい.そのことは学部運営の責任者は学部長であることを明らかにしている.


なお,4月22日の採択に際し,以下の付帯決議が付いた.
 「学校教育法等の一部を改正する法律案」に対する附帯決議
                      1999.4.22 衆議院文教委員会
 政府及び関係者は,新たな時代の要請に応え,大学における教育研究の自主性に留意しつつ,大学改革を積極的に推進するため,この法律の実施に当たっては,次の事項について特段の配慮をすべきである.
一 三年以上の在学で大学の卒業が求められる在学期間の特例については,安易な運用により大学教育の質の低下を招くことにならないよう,本法の趣旨に沿った制度の適正な運用の確保に努めること.
二 大学の運営に当たって,学長が評議会の審議を尊重し,また,学部の運営に当たって,学部長が教授会の審議を尊重するなど,適正な運用が確保されるよう努めること.
三 運営諮問会議については,その制度の運用に当たって,大学の教育研究の自主性を尊重しつつ,広く各界から大極的な見地からの意見を取り入れ得るよう配慮すること.
四 大学高等教育機関の改革推進のため,財政措置を含む必要な諸条件の整備に努めること.

<まとめ>
 今回の法改正では以下の点を明確にした.
1.評議会・教授会を審議機関として位置づけ,学長・学部長の決定権限を明確化した.
2.評議会・教授会を学長・学部長が議長として主宰し,運営での指導性を明確にした.
3.省令で多数決制を導入することなどの議事手続きを決める.学長・学部長が決定権をもつ.判断にあたっては評議会,教授会の審議を尊重することが必要.法的には拘束されない.

   また,独立行政法人化については,国会審議のなかで,「独立行政化については平成15年まで結論を延ばす。きわめて慎重に検討したい(文相)」との見解が示された.

各地の大学職組が送った要請文等について,国会審議のなかで以下のような発言がみられた.

 なお、さらに詳しい内容は全大協のホームページ(http://www.dango.ne.jp/fuj/)、および東京私大教連のホームページ(http://www.bekkoame.or.jp/i/tfpu/index.html)を御覧下さい。詳しい資料や最新の情報が掲載されています。

☆コメント&討論

<最近の東北大学の動向との関係>
<運営諮問会議の設置について>
<学長、評議会の権限強化と教授会の権限制限>
<まとめ>


ホームに戻る